肥後の相良家文書のうち、菊池氏老中等の文書

数人の中から封紙に二人の苗字官途を挙げる時には、実名をも挙げる人は本紙の日下に署判を加えた人、他の一人は最末即ち最上位の人とされている者である。右は肥後の相良家文書に就いて、同国菊池氏の老中等の文書を例として説いたものであるが、当時の家々に依って、多少通式に相違があったように思われる。とのことです。

三人以上の差出所、封紙の書き表し方

尚三人以上十人近く若しくはそれ以上に及ぶと、差出所に於いては、苗字官名は全部挙げるが、名字は一人だけに限る場合と、苗字官名を二人だけに限り、他は之を挙げず、名字は又一人に限っている場合とがある。然しこの後の場合、封紙に苗字官途を欠いたものは、本紙に於いては名字と花押のみであり、封紙に苗字を書かないものは、本紙にそれが書いてある。とのことです。

通例では実名を加えた人の苗字官名が第一行に表される

但し、この場合には二人の苗字官名を二行に書くが、実名はその中の一人のみ書くことになっている。これは三人以上の場合でも同様で、三人以上の苗字官名を三行に書くが、実名は一人に限っている。この場合に苗字官名が、本紙に実名と花押の加えてある順に書いてあれば、名字と実名とが一致し、その人の素性が明らかになるが、之が右の如き順になっていない。そこで名字と苗字とを一致させることが非常に困難なことがある。然し通例では、実名を加えた人の苗字官名が第一行に書き表されるようである。とのことです。

封紙の上書が一人に限っている場合

次に連署の場合、本紙と封紙との充所差出所は如何に書き表したものであろうか。先づ充所は何れも同じである。差出所は、連署が二人であると、封紙にはその中の一人のみが位署を表す。この一人が本紙の日下に位署を加えるものと、次行の人即ち上位とされている人が加えると、両様になっている。兎に角封紙の上書が一人に限っている場合であるが、二人が之に表される場合もある。とのことです。

充所が連名のとき右の人が最も上位

この封紙の上書に関係して述ぶべきは、連署、即ち二人以上の人が差出者となる場合の名の署判を書き表す順序である。この場合、日下即ち日附の下に署判を加え、之から遠ざかる程上位の人、即ち充所に最も近づく人が地位の高い者ということになっている。之が如何に正確なものであったかは確実に云い切ることができない。時に右の順序に従わない場合もあったようである。充所が連名のときは先に書く、即ち最も右の人が最も上位で次第に降るものとされている。とのことです。

封紙の裏書御免許

此等二例は、目下に向かって出した書状の書式で、鄭重な儀礼を表しいているものでは無い。右の説明で判るように、差出所に就いて云えば、書礼が粗略であれば、封紙は本紙より簡単となり、鄭重であれば複雑に書き表すのが通例となっていたと見るべきである。ここに封紙の裏書御免許が免許を受けた人の可然高い地位にあることを示す所以がある。とのことです。

封紙に花押のみ書く、又花押をも書かない形式もある

又本紙は官名と花押とであるが封紙に官名と名字を書き表し、鄭重になっているものもある。此等に対して本紙に花押のみ書いてあるときに、封紙に単に花押のみ書き本紙と封紙と少しも出入のない書き方があり、又封紙に花押をも書かず、即ち封紙には差出所を欠く形式をとるものもある。とのことです。