2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

封の上書に書かれているもの

次に本文の差出所充所と、封の上書のそれらと如何なる関係にあるかを見るに、第一一式に例示したものには、封紙には差出所を欠き、充所は両者一致している。之に反して部類〔二四七〕〔二四九〕は封の上書に充所を欠き、差出所のみ書いてある。第一三式に例…

切封の登場

更に先に第一一式として例示した啓は、本紙を包むに別の封紙を用いており、その中に本紙を巻込んで、封紙の上に上所謹上と、充名東寺、脇附「前越殿邊」と書き表し、封と封じ目を加えたのである。之は本紙と封紙とが、同形の紙で、両紙を背合わせにして巻い…

中世の書札礼で云う腰文

第一三式として例示したものは、料紙を縦に二つに折り、折り筋から左へと折り重ねて、左端の裏を巻き表にして、封の紙紐を以て結い、而る後謹上六郎尊僕側、人君状と書き表したのである。而してかく書き表す中僕の字のところが、封の紐の上にかかっている。…

切封、料紙の端を紐に切って巻き封じ目を加えたもの

部類〔二四七〕〔二四九〕は何れも料紙を折り畳んで、その表面に封の上書「土師名道」或いは「公足状」と書き、その上に封じ目「封」と書したのである。これは料紙の端を紐に切って巻き、巻き表に封じ目を加えたものである。即ち古文書を取扱う上で、封の種…

折り畳み封をしたもの、別の紙に包み封をしたもの

なお文書は料紙に書き表しても、そのままで先方に送致することは出来ない。これが送致に適当な処置を加える。之が手段として書き表した料紙を折畳み、それに封を加えて、内容の外に現れないように処置する。又折畳んだ料紙を別の紙を以て包み、それに封を加…

脇附、吉野時代の中頃から右の下から左の下へ

この脇附は、奈良時代のものに於いては、各敬語の直下に書き下して、各敬語の脇に書かず、所謂脇附の意味に適当しないものもある。而して脇に書く場合は、必ず右の下に書いている。この書礼は中世に入っても同様であって、鎌倉時代末期迄は、例外なしにかよ…

中世の書札礼で脇附と称する、御座下

次に中世の書札礼で脇附と称するものも用いている。その種類を挙げると、侍者謹空、侍者、御曹司迄、足下、従者等中、侍者仲、側、記室、研下、机下、座下、御座下、曹司邊、御従側、左右邊、殿門、几下、執事、御前、左右、殿人、鐙下、僕側の如き種々のも…

中世の書札礼で上所と称する謹上

次に中世の書札礼で上所と称するものも用いている。即ち充名の上に敬語を表すものである。その種類を挙げて見ると、謹上が最も多い。この他に謹状があり、謹進上、謹奉、謹通、敬上、奉、上、通の如きがあり、なお上謹もあるが、之は謹上と同じように訓んだ…

中世の充所の敬語、殿、館、様

次に充所には、先方の人を表す言葉の下に敬語を付ける。後世の消息書状には、大抵之を具えているが、奈良時代のものも同様である。今その言葉を挙げて見るに、尊みことが最も多く、尊者、尊公、貴人等があって、比較的種類が多くない。之は中世に於いて大体…

実名を充所に表す中世末期の書礼

要するに、実名と之と遠ざかるものとの両様になっている。中世の末期に於ける書礼では、実名を充所に表すことが行われたが、それより前には先づかかる例を発見し難い。それが遠く隔たった奈良時代に於いて既に行われていることを知るのである。而して実名と…

後世の仮名(けみょう)というものを表す

第二には、氏と名を表しているものもある。秦嶋足并諸尊とあるが如きもので、之はこの一例を挙げ得るに過ぎない。 第三には、後世の仮名(けみょう)と云うものを表している。例えば六郎尊、三郎侍者の如きである。 第四には、氏を表している。例えば呉原尊…

充所、実名の下に尊

次に充所の名は如何に表してあるか。その実例に就いて見ると、第一には、実名とも云うべきものを記している。前段に引用した石麻呂、道守の両句は、氏姓では無く明らかに後世の実名諱に当たるものである。すなわちこの下に尊と云う言葉は一種の敬語であるが…

充所、捻封のうは書に両名を一行に表す

なお六波羅探題充初期のものの後、他に之と同じ書き方のものがあるかと探索するに、偶々金澤文庫所蔵古文書の中に、(嘉元三年)閏十二月二十四日附、長井貞秀が稱名寺の戒圓房并に明忍房(釼阿)の両人に充てた書状があり、その端裏に記した捻封のうは書に…

六波羅両探題充に送った御教書、両名を一行に

然し、仔細に検索すると、後項奉書御教書の条で言及する如く、関東の幕府から六波羅の両探題充に送った御教書の初期のものには、両名を一行に書き表している。之が今ここに述べる正倉院文書の奈良時代の啓状に於けると同じ形式となっているのである。この六…

充名が両人のときは縦一行に書く

なお充所に関して云うべきものに、充名が一人で無く両人以上の場合、如何に之を書き表しているかということがある。両人の場合があるのみで、三人以上のものは伝わっていない。この両人の場合に、両人の名を縦一行に書き表している。例えば先に第一四式の中…

充所、後世の書状消息と同じ位置のものが最も多い

次に充所に就いて記述する。充所を持っている文書は、前掲の如く第六式から第一四式に至るものである。充所を表した位置に就いて見るに、第六式から第九式迄は、本文の第一行目に書いてある。この上に差出所の有ると無いとの両様になっているが、これは別に…

後世の書札礼との相違

更に本文の書止めにも、左の如き敬う言葉を記している。 恐懼謹頓首死罪々々謹状不具 頓々首々死々罪々謹啓 悚灼頓首頓首謹状 誠惶誠恐謹啓 死罪頓首謹言 誠恐誠惶謹啓 頓首々々謹言 謹頓首死罪 恐々謹頓首 死罪頓首 頓首々々 謹頓首啓 謹頓首白 誠惶謹啓 恐…

本文書出し、謹啓が最も多い

次に本文書出しは、右に記した如く差出所をここに表し、且つ下附の例文を副えるものもあるが、然らずして下附の例文と同じような言葉を以て書き始めるものと、なお然らずして必要に応じて適宜書き表すものとの二種がある。今後者はここに記述する必要を見な…

日附の下のものは、遥か中世末期に及んでいる

右二箇所の下附は後世に至って孰れも用いられていたが、始めに名を書いてその下に副えるものは、大体平安時代の中期迄継続し、日附の下のものは、遥か中世の末期にも及んでいる。尤も平安時代以後の下附の言葉は、右に挙げたものと相違するものもある。之に…

日附の下に副えた、状、謹上

次に日附の下に副えたものを挙げると、 謹啓 謹上 謹状 状上 状 の五通りあり、先に最も多かった謹啓が、ここでは僅かに一例に過ぎず、状上も一例のみ。謹上が二例、状、謹上が極めて多く、各々略同数に達している。この下附では、状、謹状が通例であったの…

名の下に附ける、下附

更に差出所に名を記した下に言葉を副えるものがある。名の下に附けるところから、中世の書札礼に於いて、下附と云う。この下附に二様ある。その一は書出しに名を書いてその下に副えるものと、他は日附の下に名を書いて副えるものとである。勿論一通の中で、…

自己を卑下して表した言葉、謙語

なお差出所の一部に自己を卑下して表した言葉、即ち謙語とも云うべきものがある。之は先に例示した諸例にも散見している。その言葉を挙げるに主奴麻柄全万呂、公奴猪名部牧虫、末奴下道主、奴咋麻呂、奴代鳥取國万呂、下民長江田越麻呂、下情上咋麿、下任安…

差出所の表し方

次に格式の啓状に於ける差出所、充所、日附、本文書出し本文書止めの表し方に就いて記述する。 差出所 表向の啓に、之を取り扱って出す人が差出所に現れる場合、若しくは地位の高い人の啓には、官位氏姓名を表している。然らざる場合には、大抵指名、若しく…

年号無いものが多い第一四式

更にこの第一四式に就いて見ると、年号のあるもの無きもの両様になっているが、数から云えば無い方が多い。之が如何なる事実を表しておるかは、軽々しく断定し難い。この年号の有ると無きとに依って、事の鄭重さの程合を表しておるとも云い難いが、後世に於…

後世の書状消息に最も通有した第一四式

右十四式の書式を通観するに、第一式から第五式迄には差出所のみあって、充所を欠いており、第六式から第一四式迄は充所を具えている。充所を具えておるものの中では、第一四式が最も多い。この書式は、後世の書状消息に最も通有した書式である。即ち差出所…

啓状を概観してみると

次に先に列挙した格式の文書に就いて、啓の有無并に年号の有無を調べてみると、 (諸式) (啓有年有)(啓有年無)(啓無年有)(啓無年無) 〔一〕 21 1 〔二〕 2 〔三〕 1 〔四〕 28 7 6 5 〔五〕 2 2 〔六〕 1 〔七〕 1 1 〔八〕 1 〔九〕 2 〔一〇〕 1 …

年号のあるものが多い啓

以上啓状の各種書式を挙示したが、以下是等各種に通じて観察した結果を記述する。 まづ啓と云う文言のあるものと、然らざるもの、即ち状と認めべきものとの間に於いて、日附に年号のありなしに依って分けて見るに、 啓と云えるもので、日附に年号のあるもの…

写経の校正に推挙するために出した状

更に日附に年号の付いていないものは、可成り多数伝わっている。今その一例を示すに、 (略) の如きがある。真人と云う者が、小黒に大舎人田邊岡麻呂と申す者を、写経の校正に推挙するために出した状である。 この第一四式として順次挙げた文書と同じ例のも…