写しすなわち複本を作ることがある。この写を古く案若くは案文と称している。以下便宜之を案文と呼ぶこととする。(p.13)
どのような場合に案文が作られるか、5つの例が挙げられています。
第一 文書布達の必要に依る場合
第二 文書を使用する場合
第三 文書を授受する場合
第四 文書の控として保存する場合
第五 紛失状と文書の案文
第一でさっそく二つ目の文書がでてきました。左弁官が出羽国に下した官宣旨です。文中の「非此限者」は、「この限りにあらずてえれば」とよむ。「と云えればのつづまったもので」あると丁寧に記されています。(p.15)
この官宣旨の案文は、出羽国司が、同国由利郡小友村の地頭職を持っていた小早川宗平に向けて頒ったものだそうです。この文書の内容は、佐藤進一『古文書学入門』では、p.13に出てきます。
なお、室町時代には、諸国守護人が幕命を受けてそれを守護代に伝える場合に、自分の受けた正文の写しを作ってその用を果たすのを通規としているとのことです。