行成が、道風が、―墨蹟の尊重

第三章 第二節 墨蹟の尊重に依る伝来 を読んでいきましょう。

前節でみた個人の遺札の裏を料紙として使うことも、墨蹟の尊重の一つといえるとのことです。

正倉院に伝わる王羲之の書法廿巻も墨蹟を尊重したいい例です。また世尊寺行成が小野道風の墨蹟を尊重し、その鑑識を試みているそうです。

古筆切の尊重は、既に鎌倉時代にはじまっていますが、安土桃山時代になると一般に広まって古筆家が起こりました。そのよりどころとなった手鑑には、古文書ではなく経文や歌書などが多かったのですが、古文書ばかりを用いて作った手鑑もあったそうです。