ことさらに移す

第六類 移 です。

移は直属関係にない官司が取り交わす文書です。義解には、被管の司は直ちに移を出すことはできず、まず所管に解を申して、所管から他司に向かって移を出すべきであると説いている。

〔二六〕兵部省 → 民部省

字面に「兵部之印」が十顆捺してある。書止めには「故移」とある。この二字はどう訓んだか明らかでないが、中世の文書には、「故牒」と書いて「ことさらに牒す」という実例が醍醐寺文書にある。「故移」も同様に訓んだのだろう。

「故移」でなく「以移」の場合。官衙の地位からは相管隷していないが、事柄によって管隷する場合、諸衛及び兵庫寮馬寮等は、兵事に関しては兵部省に管隷するのであるから「以移」を用いる、と公式令に規定してある。

〔二九〕奉写一切経司 → 造東大寺

では、書止めに「以移」を用いている。