自署名から草名そして花押へ

第八図の続きです。

図版では最後の行の冒頭に「共」と読める字があるのですが、活字では抜けているようです。共の字であってるかどうか、東京大学史料編纂所の平安遺文フルテキストデータベースで検索したところ、、、ありました。「共」でよいようです。

印刷本にはしばしば誤記や誤植あるいは解読の誤りにもとづく句読点、返点の誤記があるから、印刷本を絶対的に信用することはできない。(中略)誤記・誤植のないよう細心の注意を払われんことを切望する。 佐藤進一『古文書学入門』p.51

いささか強めの口調で述べていらっしゃいますね。読む側も気を引き締めて一字一句大切に読んでいきましょう。

閑話休題

牒は官司から官司に準ずべき所、もしくは官司でない所に出す文書である。

第八図は、太政官→僧綱ならびに東大寺三綱 に出した牒である。字面に隈なく外印が十八顆捺してある。なお自署名があるが、これがのちに草書に崩して形様化した草名、さらに形様化した花押というものが行われるようになったのである。平安時代中期のはじめまでは、専らこの自署のみであった。 とのことです。