自署と花押との使い分け

解は広い範囲に亙って用いた。〔五八〕神祇官太政官、賀陽致貞を備中国吉備津彦社神主代官に補せんことを請うために出したもの、端裏書は、この解には関係ない記事、次の「依請」、請うに依れの二字は、解文に依る申請を裁許せる意味を表したもので外題という。申請うために出した解には、このようにその裁許せる意味を加えて差出者に返すものが多くある。公式令には八省以下太政官に申すときは皆解を用いよ、とある。この文書によれば神祇官からも解を以て申すものであったことがわかる。

〔五九〕但馬国司→太政官、奴婢進上のことを申すために出した解、前掲下総国司解と同様のもの。

以上三通は、文書の取り扱い者が位署を連ねている。またいずれも自署名を加えている。下総国司解と但馬国司解は、当時公の文書にはすべて自署を加えるものであったから当然のことである。時代が降るに従って、自署から草名あるいは花押へと変化が起こったが、解は元来被管から所管に上げる文書であったから、かような時代になっても鄭重さを示すために悉く自署名を加えるものであった。独り解に限らず、謹んで文書を作るときは自署を用いるものであった。自署と花押との使い分けが行われてきたのである。