捺印によって売買の券文が成立

この解を受けた左京職においては、左京職云々の文言をその奥に書き、取り扱った年月日を記し、終わりに大夫、亮以下の職員が署名を加えている。「左京職判ス」とは左京職の判を捺すという意味、「家券二通を収む」とは、令から売買に関する解二通を受けた意味で、その割注に「一通職料」とは左京職に留めて置くもの、「一通主料」とは買主に交付するものという説明である。中央に「主料」と書いてあるのは、この券文が買主に交付したものであることを表しているのである。

次に「延喜二年五月十七日の本券文」とあるのは、同じ手続きを経て成立した本の券文を指しており、「白紙券文」とは、本券文に左京職の職印が捺してあるのに対して、図版の左側の文書の如く、印の捺していない文書のことであろう。(図版の左側にも印が捺してあるようですが?)この本券と白紙券文とにより、いま令から提出した券文に職印を署す。すなわち売買を認定するというのである。紙面には「左京職印」の四字を印文とする職印が三十二顆捺してある。この捺印によって完全に売買の券文が成立したのである。