伝宣の手続き上、職事が口宣を上卿に伝える時に、消息を書くことがある。その一例を松木宗綱の日記から示すに、
永正六年八月七日 宣旨
従四位上藤原冬光卿
宜叙正四位下
蔵人頭右近衛権中将藤原實胤奉
これは烏丸冬光を正四位下に叙するために出した職事正親町實胤の口宣であって、次に、
口宣一枚献上之、早可令下知給之状如件、
八月七日 右中将實胤奉
進上 中御門新大納言殿
とあるのは、右の口宣を職事實胤が、上卿松木宗綱に伝宣するために出した消息である。ここにおいて上卿宗綱は、次の消息を以って、大内記局に伝宣している。
右、任職事仰詞、早可令下知給之状如件、
八月七日 権大納言宗綱奉
大内記局
以上を綜合するに、
職事が口宣の文書を上卿に伝え、上卿がこれを伝宣する場合と、
職事が詞のみを以って上卿に伝え、上卿がこれを伝宣する場合と、
職事が口宣の文書を上卿に伝えると同時に、これに消息を副えて上卿に伝宣し、上卿が更にこれを伝宣する
との三様あったのである。とのことです。