上卿から伝宣をうけた外記局、辨官、内記局

次に上卿から伝宣を受けた外記局、辨官、内記局などは、いかにこれを外に向かって伝達するであろうか。これについて便宜外記局の場合から始めることにする。

外記局に於いて上卿から伝宣を受け、その旨を更に伝達するために出した文書の一例を示すと、

 正二位行権大納言朝臣通具宣、奉 勅、摂政藤原朝臣宜聴乗牛車出入宮中、者、

           承久三年七月八日    権少外記大江朝臣成直奉

                              〔近衛家文書〕

の如きものである。この文書は、権少外記大江成直が出したものである。その本文に、正二位行権大納言朝臣通具宣す勅を奉るにとあって、上卿堀河通具が職事から勅旨を奉りそれによって宣するに云々者、てへればとということが書いてある。

すなわち上卿通具は、近衛家實が摂政に任ぜられ、これについて牛車をもって宮中に出入を差許された勅使を、職事から受けたのである。この時口宣が出たか明らかでないが、通具がこの旨をさらに先に説明したごとき消息を以って、権少外記大江成直に伝え、成直が、この消息を受け、この勅旨を伝達するために、ここに挙げた文書を作成して出したのである。これが摂政家實のもとに送られて乗牛車出入宮中の勅旨が伝えられたわけである。この文書を宣旨と称するのである。とのことです。