職事、上卿、辨官の消息宣下

辨官が勅旨伝宣の命を受けて出す宣旨には、なお一種あり、官宣旨というが類を更めて説くこととする。

口宣、宣旨と称する文書には、叙位任官に関するものが多い。叙位は正月五日に近衛の陣の座において厳かに行われる儀式であって、次第の手続を経て、位階を受くる者に位記が授けられたのである。

任官は除目とて官職によって種々の除目に分かれていたが、叙位と同じく一定の式日に陣の座にて厳かに行われた儀式であり、これには宣旨を以って任官の由を諸人に告げたものであった。

このように一定の規式によって叙位任官が行われたが、それが次第に崩れて、口宣を以て職事が上卿に伝え、上卿などが更に消息を以て宣下して、職事の出した口宣の案を、直接位階を授かり、官職に任ぜらるる者に与えて、伝宣の手続が完了する謂わば簡略な手続が行われるに至ったのである。

職事、上卿、辨官から消息を以て、口宣を次第に宣下するところから、この手続を消息宣下と称するに至った。本来任官叙位は太政官に於いて厳かな儀式を行ったのであるが、消息宣下の略式によって行われるようになったのである。とのことです。