紙面に印を捺さない官宣旨

                              左辨官下向安芸国伊都伎嶋社路次国国

  使散位佐伯朝臣景弘    従五人

 右、權大納言藤原朝臣實國宣、奉 勅、為令奉幣帛於彼社、差件人充使、発遣   

 如件、国社承知、依例供給、路次之国、亦宜准比、官符追下、

   治承三年十二月十七日     少史小槻宿禰(花押)

 右中辨藤原朝臣(兼光)(花押)

 

右は高倉天皇の御代、厳島使発遣の為に同社に至る路次の国々に出した官宣旨であり、書止めに官符追下とある。早い時代には、事実官符を追って下したのであろうけれども、この厳島使の頃には、形式的に書いた文言であって、実際官符の下ることはなかったようである。

なお、官宣旨は、官符官牒に代わるものであっても、紙面に印を捺したものはない。請印の手続きを要せず、官符官牒よりも作成に於いて簡単であった。とのことです。