充所の無い下知状は薄礼

この項に挙げた下知状で明かな如く、下知状には充所を欠いている。然るに奉書に於ては充所があるのが通例で、後項に説明の資料に出した室町幕府奉行衆の奉書にも、必ず充所が具わっている。かく充所が有ると無いとの相違は、一般古文書の礼法から観て、相手方に対する鄭重さの重さの度合を表しているのである。充所の無い方が有る方よりも鄭重さが薄いと見るべきである。当時工商人は社会の階級の上で比較的地位の低いものと見られていたので、一般に出る奉書を受けることが出来ず、充所の無い下知状を受けたものと考えられる。とのことです。