公式令では差出所の場所による礼儀の厚薄はない

元来公式令に様式を示した公文に於ては、一種の形式の文書に、その差出所を表す場所に依って、文書の受取者に対する礼儀の厚薄を示すというようなことは現われていない。然るに下文に至ると先づ袖判が現れ、之が更に日附の次行に於ける署判、その上下、或は又日下と次第に区別が生じて来たのは、文書を差出す人が相手方如何に依って、それに臨む態度を如実に示すが如き観がある。之が即ち書札礼の一端を表しているのである。この書札礼は、下文とはその系統を異にする文書に、特に現れてきたものである。それは消息書状と称する、さまで公の意味を持っていなかった文書であった。然し、之が大いに発展して、種々の文書となり、その間に細かい書礼が慣習として定まるに至ったのである。然らば消息書状に基く文書の形様の説明に筆を移すべきであるが、尚お下文下知状の式の文書と相類似する文書と認むべきものもあるので、次にはこの種の文書の形様に就いて少しく解説を加えることとする。とのことです。