出家得度するときに必要な度縁

第三種 度縁・戒牒

出家得度する者は官省から公験の下附を受くるを要した。即ち之に依ってその人の出家せることを証拠立てるものであった。この文書を度縁と云う。人が出家すれば社会の絆から離れ、総べて公役を免除せらるるのであったから、私に出家することは違法であって、この公験に依って公に之を認可したのである。その一例を示すと次の如きものがある。

 沙彌「(筆書)慶清」

 右、被太政官保安三年十月六日符称、右大臣宣、奉勅、件度者壹萬人、宜仰治部

 省、特令得度者、今省、寮、僧綱共授度縁如件、

        師主「(筆書)法印大和尚位行慶」

       康治二年四月日

 僧綱

 法務大僧正法印大和尚位 威儀師傳燈大法師位維厳

 法務法印権僧正和尚位「(筆書)行立」従儀師傳灯法師位圓厳

 玄番(蕃)寮 

  頭従五位下行紀朝臣久長  正六位上行少允三善朝臣信□

               正六位上行小属惟宗朝臣兼良

 治部省

  大輔従五位上行源朝臣雅頼 正六位上行丞源朝臣季廣

               正六位上行小録惟宗朝臣兼遠