後世の書札礼との相違

更に本文の書止めにも、左の如き敬う言葉を記している。

 恐懼謹頓首死罪々々謹状不具 頓々首々死々罪々謹啓 悚灼頓首頓首謹状 

 誠惶誠恐謹啓 死罪頓首謹言 誠恐誠惶謹啓 頓首々々謹言 謹頓首死罪

 恐々謹頓首 死罪頓首 頓首々々 謹頓首啓 謹頓首白 誠惶謹啓 恐々謹啓

 恐々謹言 誠恐謹状 不宣謹状 不具謹状 不具宣状 謹状不具 謹状不次

 謹表不次 頓首啓 謹以啓 頓首 謹啓 謹白 謹申 謹状 以啓 不具 

 如件 白

右三十四通りあり、謹啓は比較的多いが、始めに書き表す場合程多くない。右の中長いものは、一二の例を見るに過ぎないが、終りの文言は始めの文言よりも遥かに区々になっている。なお注意すべきは、本文の終りに名を記し、次に敬う言葉を副えた例は、前にも述べた通り僅かに二三の例があるに過ぎないが、何れも謹申、謹状の如く至極簡単な言葉を用いている。之は後世の書札礼の書礼と大いに異なるところである。書札礼では、かかる場合には最上の敬意を表し、多くの言葉が副えてある。ここに両時代の書礼に於ける著しい相違が現れている。とのことです。