これら諸大名の伝馬の掟書に依ると、手形には往々にして疑わしきものが生じ、之を以て不正を働くものも起こり、その取り締まりは厳重に定めてある。かような不正を避ける為に、特殊の印を用いたのであろうが、更に手形の料紙にも特殊なものを用いる必要があったものと見え、ここに挙げた家康の慶長六年の掟書に見える伝馬の朱印を捺した手形の紙は、普通の文書とは異なって、黄紙を用いている。之は鳥子紙の自然の黄色では無く、黄色に染めたものである。ここに印と料紙の特質とを結びつけ、伝馬の手形の特殊な働きを発揮せしめるよう、充分に工夫を凝らしていた趣が知られる。とのことです。