花押よりも印が軽いものと見做されていたよい証拠

更に本文書止めに「恐々謹言」と書いた例を挙げると、次の如きものがある。

(略)

この文書は差出所に岡とあってその下に「郡」の一字を印文とした黒印が捺してあり、一見したところでは何人の出したものか判然としない。然し右筆の点から北条氏綱が越後の長尾為景に送った書状であることが明らかになる。岡は綱の略字であろう。「郡」の印文は如何なる意味か判らない。この文書は大永五年のものと推定することができる。本書と離して別に作った追而書である。追而書であるから略字を用い印を捺したとは限らぬのであろうが、略字を用いているところに印を捺しているのは、恐らく印に依って鄭重さを厚くしているとは思われない。花押よりも印が軽いものと見做されていたよい証拠になるであろう。とのことです。