越前の朝倉義景の同国劍宮の別当織田寺玉蔵坊宛黒印状

なおこの類に入るべきものとして、〔五七六〕の如きものもある。之は越前の朝倉義景が同国劍宮の別当織田寺玉蔵坊に、年頭祈祷の巻数等を送ったのに対して答えた書状である。義景の下に縦一寸六分五厘、横一寸四分ある鼎形の実に立派な黒印が捺して有る。この文書は元亀三年のものであるが、義景は之より先永禄年間に別の黒印を用いている。然るに今この文書になる印は、かかる年頭始め節句の礼儀に対する答礼として出す文書にのみ捺している。この種の文書は一時に沢山出す必要があり、従って花押よりも印を用いるのを便宜としたためであろう。かくてここにも印が花押よりも軽く扱われていた事実を見るのである。とのことです。