信長が秀吉の夫人杉原氏に送った「はげねすみ」の書状

 ぬ式 日附を欠き、差出所名字略書、充所を具えたもの

かような形式のものは多く例を見ないが、〔五八三〕に挙げたものに依り、かかる形式のあったことが知られる。

 この文書は信長が秀吉の夫人杉原氏に送ったものである。杉原氏が信長の見参に入り、種々贈物を進めたるを謝し、且つその容貌が前よりも立派になったことを祝し、之に対して秀吉が不足を申すは不都合である、秀吉の如きはげ鼠のような容貌の者には、かかる容色の婦人を求めようとしても得らるるものではない。杉原氏は嫉妬を起こすことなく夫人としての嗜みに努め、平心に夫に仕うべきことを喩している。なお終りに、この書状を秀吉に見せよと書いてある。信長と秀吉夫妻との間に於ける親昵さ、さては秀吉の容貌等を知ることのできる実に貴重な史料である。とのことです。