陸奥黒川の蘆名氏の家臣富田能登守が同国耶麻郡示現寺内嘯月院に寺領を寄進するために出した文書

以上挙げた諸例の如く、直接の差出所では無く、或る文書に証拠力を付けるために加えた談判と申すべきものに、右の如き形式をとったものがある。即ち〔五八九〕に挙げた文書はその例である。陸奥黒川の蘆名氏の家臣富田能登守が、同国耶麻郡示現寺内嘯月院に寺領を寄進するために出した文書であるが、袖に蘆名盛隆の花押と一つの印が加えてある。之は本文の終りに、将来この寄進地に違変なきために、盛隆の判行を申請うとあるように、この申請いに依って盛隆が加えたものと見るべきである。とのことです。