日暹交渉史の最初を飾る古文書の原本

右の文書に依ると、通商復旧の交渉の成立を報じた暹邏国の返書があったわけであるが今伝わっていないようである。これより少しく遡った慶長十一年同国から薩摩の島津家久に送った国書の正文が、今島津家に伝わっているから参考のためにそれを図版に収めておく。

(略)

支那貿易五官が風波の難に遭って、太泥に漂着し、更に暹邏国に逃入したが、暹邏国は兼ねて我が国と貿易を行う希望があったので、この五官の帰航に托して、慶長十一年四月薩摩の島津家久に黄檀香という香料、観音の仏像、活麝一隻即ち奇獣を贈り、交易を年々行わんことを望む由を伝えるために出した文書である。五官は既に薩摩に来たって通商に従っていた者であろう。日暹交渉史の最初を飾る古文書の原本で、実に珍重すべき史料である。年号は支那のものを用いているが、本文の終りに捺してある朱印は暹邏国のものと思われる。大きさは径一寸三分あり、印影は龍の図様の如くである。とのことです。