而してこの特色は印影に種々の形像を交えて之を複雑化した、例えば虎ノ印判の如き印であって、これ等の印は、単なる個人の印で無く、その家に具わるもの家督の権威の表徴とも考えられていた。やがてこの最盛期を過ぎると、即ち天正の末年以後に至ると、印がすべて個人的となり、前代に見るような特色を発揮しなくなった。然し元来この新しい印は、印文に依って理想を表すとか、又は権威を示すとか、その使用には種々の原因が考えられるが、署判を花押にて行うよりも簡略な方法にて済まし得るところにも、発展の重大な要因があったから、個人的の色彩が濃厚になって、之が一般に益々普及し、殊に庶民の人人にまでその使用が及ぶに至ったのである。とのことです。