この裁決の裏書を加えた後、この文書を訴論人に下して裁許がなされたのである。即ちこの問注勘状が、上申の形式をとった文書であるが、実は裁許状の内容を具えているものであった。既に述べた下文、下知状等は、この問注勘状を、その本文の中に織込んで勘状として独立した形式を示していないのである。思うに訴訟の裁許状としては、下文下知状の形式よりも更に古い形式を具えているように思われる。文字の素養に乏しかった者の間に於ける訴訟の裁許状には、問注勘状をそのまま示すことが、却って裁許の結果に従わしめる効果が多かったことであろう。
なおこの問注勘状は、訴論人の申すがままを筆を以て表しているから、当時の口言葉がよくわかる。又それを書き表す文体に所謂宣命体をとっていることは、文書の文体の研究にも貴重な資料である。とのことです。