「ミミヲキリ、ハナヲソギ」高野山領紀伊阿弖河庄百姓の片仮名書の申状

なお庄園の百姓等の愁状には、〔六二九〕の如き仮名交じりの文章で書いたものもある。高野山紀伊阿弖河庄の申状である。又上にに示す如く、全文殆んど片仮名で書いたものもある。

図版は前後の一部を示したに過ぎない。之も同じく阿弖河庄の百姓が、地頭の非法等を訴えるために出した申状である。かように下々の者の文書に片仮名書が多い。申す迄も無く、かような人々の文書に片仮名が用いられたことに依って、仮名が独立した文章に用いられる傾向の普及したこと、惣じて仮名が如何に普及して行ったか、その有様を知ることができる。全文は〔六三〇〕に収めておく。とのことです。