鎌倉時代以来、殊に武家の訴訟に関する訴状陳状は極めて多く遺っているが、一つの訴訟に関して三問三答を重ねた三訴状三陳状が揃って伝わっているものは多くない。今ここでは室町時代に於ける三問三答の訴陳状の実例を示すこととする。即ち〔六三六〕は、天文六年十二月から翌七年三月に亙り、大徳寺塔頭如意庵から千秋晴季に対して同庵領京都土御門萬里小路敷地に関して訴えた時の三問三答状である。之は何れも案文を一まとめにして写したもので本書ではない。之に依って当時に於ける三問三答状の形様を窺うことができる。而してこの例を参考にして、各問答の一部が残っている場合に、失われたものの形式を略推測することができるであろう。とのことです。