勧進帳は軸を付け表紙を飾り装幀を立派に整えるのが通例

 第二六類 勧進帳 勧縁疏

寺院の造営修理のために、その費用の寄附を募るに当たり、その勧誘文として作る文書を勧進帳、或いは勧縁疏と云う。

〔七〇二〕はこの勧進帳の一例、延文五(正平十五)年七月、僧勧慶が近江常楽寺観音堂再造の用途を募らんがために作った勧進帳である。勧進帳は諸人に読み聞かせ、又観せるものであるから、料紙には優美な下絵のあるもの、若しくは打曇の鳥子を用い、且つ軸を付け表紙を飾り、装幀を立派に整えるのが通例である。又筆蹟も努めて能筆の力を借りている。この常楽寺勧進帳には、料紙が鳥子紙で金銀泥の模様するものが用いてある。勧進帳の古いものとしては、京都泉涌寺に、同寺開祖俊芿が承久元年十月創立造営の勧進のために作った勧縁疏がある。俊芿自ら筆を執り、宋朝の書風を帯び極めて優れた書風を具えている。又周防松崎天満宮には正元元年同宮塔婆造営のために作った勧進帳の軸が残っているが、これは文書の軸に用いる籤の形を具えたもので、上部には螺鈿の青貝にて年号と勧進の名目が記してある。これに依って当時に於ける勧進帳の優美な装幀を想見することができる。とのことです。