天長十年九月の御願文の紙継目裏毎の花押は平安時代末期以後のもの

又字面に間隔を置いて手印を加えられた点は、常時通用していた印に近い性質を思わせるが、末尾の起請の詞と相応じて、御願文に記された御意趣を強烈に表明する御手段として、御手印を加えさせられたものと考えることができる。かくこの御願文は、手印の最古のものであり、又その意味を知ることができるものでもあり、之に依って古文書学上実に貴重な資料となる。更に実物を詳しく拝見すると、紙継目裏毎に花押が加えてある。その形様を観ると、遺憾ながら当時のものでは無く、花押が追々用いられた平安時代末期以後のものである。乍然、これに依って後世この御願文が如何に大切に護持して来たかを知ることができる。とのことです。