第三類 都状
願文の一種とも見るべきものに都状がある。之は寿命延長を祈請するために泰山府君を祭る時に奉る祭文である。既に平安時代から泰山府君を祭る信仰が行われ、之がために作った都状が朝野群載に収めてある。もちろん当時の正文は伝わっていない。この泰山府君は、古来陰陽道を家業としていた土御門家に於いて祭祀を行ったのであって、同家には、江戸時代初期から同時代を通じて、後陽成天皇以後の御歴代并に徳川家康以下の各将軍等が、泰山府君祭に当たって奉った都状の正文が十数通伝わっている。
古いときの都状の形様は、正文が伝わらないので何等知ることを得ないが、この土御門家伝来の正文を見るに、料紙は黄紙が用いてある。文字は朱筆を以て書き、文中天皇の御諱のみ墨筆にて宸翰を染めさせられたものである。将軍家の都状も、同じく朱筆にて書き、諱の文字だけ将軍が自筆を以て書いている。黄紙朱書を用いたのは、祭文を神聖にするためにとった手段と思われる。とのことです。