後世の書状消息に最も通有した第一四式

右十四式の書式を通観するに、第一式から第五式迄には差出所のみあって、充所を欠いており、第六式から第一四式迄は充所を具えている。充所を具えておるものの中では、第一四式が最も多い。この書式は、後世の書状消息に最も通有した書式である。即ち差出所と充所とを具えた文書には、奈良時代に於いて種々の書式が存していたのであるが、その中の第一四式が後世に迄及んで、一般のものとして用いらるるに至ったと見るべきである。後世に於いても、第一四式と限ったわけで無い。唯返事の場合の如き、充所を欠き、又尊貴な方からの消息には、差出所充所共に欠く場合もある。然し、当時の書札礼に於いて論ずる規準となる書式は、奈良時代の第一四式であったと見るべきである。とのことです。