2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

書止め「執達如件」が「状如件」よりも鄭重

次に〔一九〕の如く、書止めに「状如件」と結ぶものがあり、〔二〇〕の如く、「執達如件」と結ぶものもある。前者の封紙の上書の差出所が、「右中弁(花押)」と表したのに対して、後者は「右中弁政顕」とあり、花押が実名に代わっている。之に依って見ると…

「悉之、謹状」という鄭重な書礼

次に日附に年附をも書き表したものの書式には、先づ〔一四〕の如く書止めが「悉レ之」で充所が無く、〔一五〕の如く書止めに「悉レ之」に「以状」を加えて充所を欠き、更に〔一六〕の如く、書止めが「悉レ之」で充所を具え、更に又〔一七〕「悉之、以状」の…

実名と謹言、進上を附けた余り見当たらない例

次に〔一〇〕の如く、書止めに「謹言」の敬語を表したものがある。〔一一〕の如く、「恐々謹言」と結ぶものもある。この例には上所「謹上」が附けてあるが、無いものもある。〔一二〕「恐々謹言」に代えるに、「恐々敬白」を以てしたもののあることは、他の…

「執啓」よりは「上啓」、「謹上」よりは「進上」の方が敬意を表す

次に書止めに、「状如件」と結んだものがある。〔四〕はその一例である。〔五〕は僧侶の書状で、官の代わりに「沙門」と書いたもので、書式としてはこの部類に入る文書である。〔六〕は「執達如件」を書止めに書いた例、〔七〕は下附に「奉」と書いてある。…

「悉之」に更に「以状」を附けたものもある

五 官と花押とを書いたもの この書式のものには充所を特に記さず、文書を受けべき人の名を本文の中に記入しているものがある。〔一〕はその一例、書止めは「悉(ツクセ)レ之(ヲ)」と結んでいる。次に〔二〕の如く、書止めは同じでも、充所を具えているも…

弘安礼節書中礼

ここに第三項 と第四項とを対比するに、第四項のものに本文書止めの例文に於いて、第三項のものに見ることのできない即ち第四項〔一三〕〔一四〕の如きものがある。弘安礼節書中礼に依ると、ただ「恐々謹言」若しくは「恐惶謹言」と敬語を表すよりは、之に差…

女子に充てた綸旨、書止めは「あなかしく」

次にこの差出所の書式で、日附に年号を附けたものは実例が少ない。〔一五〕は、蔵人頭が奉じて女子に充てた綸旨で、仮名交じりで書いてあるから、書止めが「あなかしく」となっている。 次に〔一六〕は、書止めに「執達如件」と結び、〔一七〕は「恐惶謹言」…

僧侶に充てた御内書

更に〔一二〕の如く、「誠恐敬白」と結んだものもある。僧侶に充てた御内書であるから、この書止めの文言を用いたのである。〔一三〕は、書止めに敬語を附けた計りでなく、その実名が上に重ねてある。之は「謹言」と敬語を書いたものよりは鄭重な書礼である…

下附と脇附を備えた氏政の書状

更に〔四〕の如く「穴賢」、〔五〕の如く「敬白」、〔六〕の如く「恐々謹言」、〔七〕の如く「恐々敬白」と、各敬語を附けたもの、又〔八〕〔九〕の如く、「恐惶謹言」と結んだもの、〔十〕の如く「恐惶敬白」と書いたものもある。此等の書式には、氏政の書…

「執達」よりも「執啓」の方がより敬意を表す

四 名字のみを書いたもの この書式には、先づ書止めに「状如件」と結んだものがある。〔一〕はその一例。之に上所が附けてあるのは目を惹く。〔二〕の如く、「執達如件」もあり、又〔三〕の如く、「執達如件」に代へるに、「執啓如件」と結んだものもある。…

鄭重な署判である草名

三 草名を書いたもの この例は稀である。〔一〕は本文書止めを「候也」で結び、充所に何等敬語を附けていない。〔二〕は、本文書止めは通例の如く「恐々謹言」で結んで、〔三〕は充所を欠いており、文面からも返書と見るべきものであるが、書止めは「恐惶謹…

年号のないほうが厚い書礼

この項の書式で、書止めに敬語を附けた例は多くない。即ち〔二二〕の如く「謹言」、〔二三〕の如く「恐々謹言」と書いたものは類が少ない。 この項の中に於いて、日附が月日のみのものと、之に年号を附けたものとの、書礼における厚薄の程度は、充所の書き様…

下知状の書止めが移って用いられた珍しい例

次に書止めに、「状如件」と書いたものもある。〔一七〕はその一例であるが、類例は極めて多くある。更に書止めに「執達如件」と書いたものもある。〔一八〕は伏見上皇の院宣でこの例に入る。〔一九〕は差出所が日附の次行にあり、又充所も異式であるが、書…

文禄二年吉川広家の感状

先に挙げた諸例は日附が月日のみのものであったが、更に年号の附いているものを挙げる。 この書式の文書には、先づ書止めに何々「候也」で結んでいるものがある。〔一六〕は文禄二年朝鮮役に於ける吉川広家の感状で、正にこの例に当たる。古い時代には類を見…

「恐々謹言」「恐々敬白」「恐惶謹言」「誠恐敬白」の順に厚例となる

次に、「恐々謹言」、若しくは「恐々敬白」と附けるものがある。〔一二〕〔一三〕はその例である。 更に「恐惶謹言」「誠恐敬白」と附けたものもある。〔一四〕〔一五〕はその実例であるが、この類に入るものは、その例を多く見ることができない。 以上の順…

「敬白」は主として僧侶充て

次に書止めに「穴賢」、若しくは「かしく」と附けたものがある。〔八〕〔九〕はその例である。 更に書止めに「謹言」と附けたものがある。〔一〇〕は案文であるが、前左大臣(一条家経)から太政大臣(西園寺実兼)に送った消息の書礼を見るべき貴い資料であ…

「状如件」、「以状」、「執達如件」と鄭重になっていく

又同じ人が奉じた美福門院の令旨でも、〔七〕の如く書止めが、「執達如件」となている。「謹状」と「執達如件」との間に於ける儀礼上の厚薄の程度は、之に依って同等と考えていたとも見るべきである。而して「状如件」よりは「以状」が、「以状」よりは「執…

「以状」と、より鄭重な「謹状」

次に書止めに「以状(もってじょうす)」と書くものがある。〔五〕はその一例で、堀川光継の奉じた令旨である。又之と同じ形式で、「謹状(つつしみてじょうす)」と書き、差出所に下附「奉」を附け、上所に又「奉」と書いた〔六〕の如きものもある。之は藤…

「状如件」「仍状如件」の書止めでは「とのへ」はない

次に書止めに「候也」と書かず、単に本文のままで終わっているものもある。〔三〕はその一例である。 次に書止めに「状如件」、若しくは「仍状如件」と書くものがある。〔四〕はその一例である。之には「とのへ」と書いたものは見当たらない。とのことです。

御内書の名称は義満の頃から現れる

足利将軍家に於いては、尊氏の時よりこの書式の文書を出しているが、「とのへ」と書き始めたのは、義持の頃からで、「殿」と「とのへ」との差別が判然として来たのは、義教の時からのことである。尚御内書とは、この書式以外のものをも称するが、その名称は…

最も疎略な書礼「とのへ」

殿を真書に書くのが至極の鄭重さを示し、行書草書と次第に略儀になり、仮名で「とのへ」と書くのは最も疎略の書礼とされているのである。尤も女子の消息、若しくは女人充のものには、本文が多く仮名書であるから、従って「とのへ」と仮名で書くのが通例であ…

自筆書と右筆書、「殿」と「とのへ」

二 花押のみを書いたもの この書式には、先づ文書書止めに敬語がなく、何々「候也」と結んでいるものがある。〔一〕は足利義教の自筆の書状で、その一例である。〔二〕も之と同じ書止めのもので、足利義輝の右筆書の書状である。此等を何れも御内書と云う。…

差出所に名も花押も書かないもの

一 書式の種類 差出所に基準を置いた各種書式 一 何物も表さないもの 差出所に名も花押も書かないものがある。先に挙げた御消息の如きはそれである。又、金澤貞顕がその子貞将に与えた書状も之の部類に入る。この場合日附の無いものと、有るものとある。又充…

各種書式の表は、全部の説明後一括して掲げる

次に各書式を順次説くのであるが、各種書式の表は、全部の説明を終えたところに一括して掲げることとした。かくすれば、各種の書式を、表に依って一目に通覧することができる便宜があるからである。各種の書式を一、二年題した番号と、各種書式の表の番号と…

封紙の欄の「無」「(不明)」について

右に九つの部分を挙げたが、今日に伝わる書札様の文書は、悉くもとのままの完形で伝わっているのでは無く、中には封を加えた料紙即ち封紙を失っているものがある。表の中封紙の欄で「無」と記してあるのは、本体の方には差出所が書いてあるが、封紙があって…

差出所を基準に書札様文書の書式を示す

右にて述語に就いて一通りの説明を終え、次に差出所を基準に置き、書札様文書の各種の書式を示すこととする。ここでは実際の文書から、日附、本体の差出所、封上書の差出所、下附、本文書止め、上所、充所の本文と敬語、封上書の充所、脇附の九部分に当たる…

本体の文面と封の上書との両様ある差出所充所

尚書札様の文書には、封を加える為に、本体の料紙とは別の料紙を用い、又本体の料紙を之に充当することもある。而してこの封を加える部分に、封の上書として本体の文面に表した差出所、充所を記す。その場合、本体の文面の差出所と充所と封の上書のものとが…

本文書止めの敬語

更に本文の書き終わりを種々に書き分けるのは、受取者に対して敬意を表す度合如何に依って、種々に相違するのである。差出者と受取者の関係如何に依っては、そこに何等特別の文言を添えないことがある。然しこの添えないことが一つの儀礼ともなっている。そ…

「謹上」「進上」等の上所、「殿」等の敬語、「進之候」等の脇附

充所に於いて、受取人の何者であるかを記した上に、敬意を表す意味で記す「謹上」、「進上」、「進々上」の如き文言を上所と云い、何者であるかを表した下に記す「殿」、「館」等の如き文言を充所の敬語と云い、更にその下に敬意を表す為、若しくは書札の性…

差出所に附記した「奉」「状」「上」「請文」などの下附

差出所に於いて、その何人であるかを書き表した右の下に、小さい文字で、「奉」或いは「状」、「上」、「請文」等と記してあるが、之は差出所の本体たるものの下に附記したものであるところから、下附(したづけ)という。日附の中で、年号を月日の肩にかけ…