2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

公家と武家で著しい相違がある書札様の文書

この第九項から以後は総て名字が書いてある上に、花押を加えた書式となっているものである。以下に挙げる諸例に見る如く、この書式をとった書札は皆武家の人々のものである。公家の人々の書札には、かかる例は稀である。ここに書札様の文書に於いて、公家と…

伊勢貞宗が善法寺殿局阿茶局に充てた奉書

次に〔一三〕の如く書止めに「かしく」と結んだものがある。之は伊勢貞宗から善法寺殿の局阿茶局即ち女子に充てた奉書であるから、名字も上の一字仮名で書き本文も仮名を用い、自然書止めに「かしく」と書いた次第であるが、之に年号が附いているのは珍しい…

「如件」で結んだものは大抵仮名書ではない

次に日附に年号をも附けた書式のものには〔一〇〕の如く、何々「也」で本文を結んだものがあり、又〔一一〕の如く、「如件」と書いたものもある。この晴宗の判物は、女子に充てた文書っでは無いが、本文を始めとして充名迄仮名を以て書いている。之に前述の…

僧侶に対しては「恐惶謹言」を「恐惶敬白」に変えている

次に〔三〕の如く、書止めを「状如件」と結んだ例がある。又〔四〕の如く、女子に充てたもので本文を仮名に書き、名字の中の一時も仮名に書き、書止めに「かしく」と結んだ例もある。更に〔五〕の如く、書止めに「謹言」、〔六〕の如く、「恐々謹言」とかい…

「殿」と「とのへ」の書き分け、室町将軍家の御内書と同様

同じく何々「也」と結んでも、〔二〕の如く名字を漢字で書くものは多いのである。之の場合相手に依って充所の敬語を「殿」と「とのへ」と書き分けている。之は室町将軍家の御内書と同様である。とのことです。

他の諸大名の文書には見られない大友家の書札礼

然し之は大友家の書札礼に現れた特別の書礼である。大友氏の文書に於いては、右の文書に見る如く、上の一字を仮名で表すことを、名字の全部を漢字で表すよりも疎略な礼儀としているのである。かく上の一字を仮名で表すと、書止めは「也」で結び、且つ充所に…

男子充てなのに名字の一字が仮名書きになっている文書

一〇 名字と花押とを書いたもの 先づ〔一〕の如く、書止めに何々「也」と結ぶものがある。この文書は、豊後の大友義鑑のもので、特に差出所に名字の上の字を仮名で表しているのは注意を惹く。先にも述べた如く、男子から女子に充てた文書には、名字を全部仮…

日附に年号を加えるのは薄礼

先に述べた如く、この部類には年附のあるものは稀である。〔六〕は少ない中のその一例である。本文書止め」に、「言上如件、某頓首誠恐謹言」と結び、下附に「奉」、上所に「進上」と書いているが、何れも前掲の諸例と異なったところはない。思うにこの部類…

下附に特に「上」と書いた鄭重な書礼

又右の両様より明らかに厚き書礼を示しているものとして、〔五〕の如く、披露を申請う形式に書き、その書止めに「言上如件、某誠恐頓首謹言」と結び、下附に特に「上」と表し、上所に「進上」と書いたものがある。この部類では、至極鄭重な書礼を表している…

何れが多く鄭重さを表しているか判然としない

更に〔三〕の如く、本文書止めに「言上如件、某誠恐謹言」と書き、下附に「奉」、上所に「進上」と附けたもの、又〔四〕の如く、下附上所は前記と同じで、書止めに「某恐惶頓首謹言」と書いてあるものもある。この両様のものは、何れが多く鄭重さを表してい…

官と氏と名字とを書いたもの

九 官と氏と名字とを書いたもの この部類には日附に年附を記したものは多く見当たらない。平安時代末期のものであるが、〔一〕の如く、書止めに「悉之、謹状」、〔二〕の如く、「某恐惶敬白」と表して、前者は、上所に「謹上」、後者は「進上」と附け、何れ…

花押より名字のが鄭重なので、上所を附けるものが極めて多い

尚この項に就いて目を惹くことは、第五項の官と花押とよりも、上所の附いているものが極めて多い点である。これは花押よりは名字の方が鄭重な書礼であって、之に相応して上所を附けることとなっていたものと思われる。とのことです。

「謹言」系と「如件」系

この項では、日附に年号の無いものを、本文書止め「以状」「如件」系と「謹言」系との二様に分けて挙げたが、前者の総べてが、後者よりも鄭重さに於いて欠けているというわけではない。この二様の一系に於いては前記の通りの順序を以て次第に書礼の鄭重さを…

日附に年附を書いてある文書は遥かに少ない

更に〔三七〕の如く、書止めに「言上如件、某誠恐謹言」と鄭重に表して、上所に「進上」と附けたものがある。これらは鄭重な書振りである。右の諸例に見る如く、日附に年附をも書いてある文書は、日附が月日のみのものよりも書式の種類が遥かに少ない。この…

どちらが鄭重か判定に苦しむ「謹上」と「謹言」

次に日附に年附を表したものには、〔三三〕の如く書止めに「状如件」と、〔三四〕の如く「執達如件」と書いたものもある。尚〔三五〕の如く、「悉之、謹状」の例文で書止めて、上所に「謹上」と附けたもの、〔三六〕の如く、上記「謹上」を「謹言」と変えて…

書止め「言上如件、某誠恐頓首謹言」上所「進上」脇附「政所」、至極の敬意

又〔三〇〕の如く、書止めに「某誠惶誠恐謹言」と結んで、上所に「進上」を附けたもの、〔三一〕の如く「言上如件、某恐惶頓首謹言」と表し、上所に「進上」と附けたものがある。更に進んで〔三二〕の如く、披露を請う形式に書いて、書止めに「言上如件、某…

書止め、下附、上所

更に進んで〔二六〕の如く、書止めに「之状如件、某誠恐謹言」と表し、下附に「奉」と、上所に「進上」と附けたもの、書止めに〔二七〕の如く、「言上如件、某恐惶謹言」と表し、下附と上所とに上記と同様の例文を附けたもの、又〔二八〕の如く、書止めに「…

立ち位置の確認

細かい記述が続くので、立ち位置を確認してみましょう。 いまは「中編 古文書の形様」 の「第三部 書札様文書」 の「第三 書札様文書の書式」 の「一 書式の種類」 の「差出所に基準を置いた各種書式」 の「八 官と名字とを書いたもの」です。 このあと一七…

書止めに実名を表さず、「誠恐謹言」と結んで「奉」「謹上」と附けたもの

尚〔二一〕の如く、書止めに「何某謹言」と書き、上所に「謹上」と附けたもの、〔二二〕の如く「進上」と、又〔二三〕の如く、「謹々上」と附けたのがある。進んで〔二四〕の如く、書止めに「何某恐惶謹言」と書き、上所に「謹上」と附けたものがある。又〔…

書止めに種々の敬語を附けたものが多くある

次にこの部類のものには、更に書止めに種々の敬語を附けたものが多くある。先づ〔一三〕の如く、「謹言」と書いたもの、〔一四〕の如く、之に更に下附「奉」と上所「謹上」とを、〔一五〕の如く、上所に「謹々上」を附けたものがある。次に〔一六〕の如く、…

書止め「執啓如件」以下のもので上所を附けない書式はない

〔九〕の如く、書止めを「上啓如件」と変え、下附に「奉」、上所に「謹上」を附けたもの、〔一〇〕の如く、上所に「進上」を附けたものがある。又〔一一〕の如く、書止めを「言上如件」と書いて、上所に「謹上」を附けたもの、〔一二〕の如く、下附に「奉」…

追而書が再度加えてある、一つの標本

次に〔四〕の如く、書止めに「執達如件」と書いたものもあり、〔五〕の如く、同じ書止めで、上所に「謹上」を附け、〔六〕の如く、更に「進上」と附けたものもある。次に〔七〕の如く、書止めが「執啓如件」と変わり、下附に「奉」、上所に「謹上」と附けた…

書止め、下附、上所

八 官と名字とを書いたもの 先づ〔一〕の如く、書止めを「悉之、以状」で結び、上所に「謹上」と附けたものがある。〔二〕は「悉之、謹状」で、書止めは〔一〕よりも鄭重であるが上所を欠いている。従って何れが鄭重さを多分に表しているものか俄かに決定し…

草名は花押よりも鄭重

尚〔四〕の如く、日附に年号を附け、本文書止めを「仍執達如件」で結んだものもある。 草名が花押よりも鄭重な署判の方法であるから、この項の書式が、先の項の同じ例文のものよりも書礼に於いて厚いことは申す迄もない。 七 位階と花押とを書いたもの この…

官と草名とを書いたもの

六 官と草名とを書いたもの 官名に花押に代えるに草名を以て加えたものがある。かかる例は余り多くない。 先づ〔一〕の如く、本文書止めを通例の如く、「仍執達如件」で結んでいるもの、又〔二〕の如く、披露を請う書式で、同じ書止めを用い、上所に「謹上」…

年号のあるよりは、無い方が書礼が厚い

従ってこの事実に依ると、この項に於いては、前項とは相違して、年附のある方が無いものよりも多分に鄭重さをしめしているかのようにも考えられる。この項の差出所は、官名に花押を加え、自然従来の公文書に於ける位署に類似し、ここに幾分公の意味が現れる…

年号の有無では書礼の厚薄を決定し難い

次に〔二六〕〔二七〕が、〔二八〕〔二九〕以下よりは、書礼に於いて薄いことは申す迄もないが、〔二五〕以上のもの全部より厚いとは俄かに決定し難い。恐らく本文書止めに、「仍執達如件」と記した〔二一〕の上に位すべきものであろう。 次にこの項の中、日…

「状如件」「仍執達如件」より鄭重な「恐惶謹言」「恐惶敬白」

〔三〇〕以下の書礼は、〔二五〕以上のものよりも、一層鄭重さを表していることは勿論である。〔二三〕〔二四〕〔二五〕と〔二八〕〔二九〕と何れが鄭重さを多分に表しているか俄かに決定致し難い。然し〔二八〕〔二九〕は、日附に年号を含んでおり、元来な…

鄭重な書止め「言上如件、(実名)頓首謹言」

〔三〇〕は、書止めの例文に「言上如件、(実名)恐惶謹言」と書き、頗る敬意を表して、下附に「奉」と上所に「進上」と附けているものである。更に鄭重なものとして、〔三一〕の如く、書止めに「言上如件、(実名)誠恐謹言」と書き、下附は欠くが、上所に…

義満から春屋妙葩に送った御教書

更に〔二六〕の如く、書止めに敬語「恐々謹言」を附けたもの、更に〔二七〕の如く、之に上所「謹上」を附けた珍しい例もある。〔二八〕の如く、書止めに「恐惶謹言」と鄭重に書いても、上所を附けない例もある。然しこれは将軍家御判の御教書で、特に自筆で…