2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

端の余白に書く際は、中間から書き始める

いづれにしても端の余白に書き始めるに当たって、余白の最も上からせずして、中間から書き始め、下まで行って書き終えない時、余白の上に残したところに書くが、この時には行を斜に書くのが通法である。これでも尚書き終えないと、行間に及ぶのである。行間…

追而書は、本紙と礼紙とある場合通例礼紙に書く

書状の料紙が本紙と礼紙と二枚から成るときは礼紙に書くのを通例としていた。従って追而書を、又礼紙書とも呼ぶのである。礼紙は追而書を記すとのみは限らず、之にも本文の続きを書くことがある。この場合追而書を、右端の余白、或いは行間に書く。又礼紙を…

追而書または端書

追而書の書式 書札様の文書に就いて特に注意すべきものに追而書がある。書札の本文を書き終わり、尚書足らざることを追書するを追而書と云う。之を本文を書いた端の余白に書くところから端書とも云う。とのことです。

充所を欠くことが多い返事の請文

次に返事の請文、広く返書には、充所を欠くことが多い。之は当然先方が定まっているわけであるから、謂わば重複を避けた書式と思われる。然し差出所は通例の書礼に従い、殊に請文と称するときは、目上の者に向かっての返事であるから、鄭重な書礼をとる。そ…

披露状では披露する人でなく披露される人に対する敬意を示す

之に対して披露書即ち奉書に対する披露状は、直接充所に現れる披露する人の身分に基づかず、披露を受けさせらるる尊貴な方に対する儀礼を考慮して文章が作成されている。差出所としては謙り、充名に対しては努めて敬意を表す、至極平凡な儀礼が書札礼の上に…

奉ずる人の身分に基づく差出所充所の書礼

尚差出所充所の書礼に就いて見るに、奉書即ち綸旨院宣等の場合、仰せを発せらるる方は、至極尊貴であっても、その奉書の差出所は、奉ずる人の身分に基づいて、先方に対する相当の儀礼を考えて記すものである。綸旨であれば、差出所に現れる蔵人頭若しくは蔵…

四種の区別を室町時代から

右は大体の目安であって、必ずしも之に限ったわけではない。この四種の何時頃から起こって来たものか、勿論明確に之を知り難い。室町時代の各種書札礼には、かくの如き区別を目安に立てている。恐らくこの時代に入ってかくの如く固定した目安が現れるに至っ…

書札礼の書礼は、披露書、進上書、謹上書、打付書の四種

その礼の厚い極致は、本人に直接充てず、その側近に奉仕している人に充てて書く、即ちその人に取次披露を請う文言を、本文書止めの例文として用いるのである。即ち披露せしめ給うべし、或いは洩し披露せしめ給うべし、某恐惶頓首謹みて言すというように書く…

中世の書札礼で打付書というもの

この上所、脇附を欠き充所の主体に単に殿の如き敬語をのみを附けた書礼を、中世の書札礼で打付書と云い、礼の薄い書式とされている。これから次第して上所に謹上を附けたものを、謹上書、進上を附けたものを進上書と云い、かく次第に礼の厚い書式としている…

充所を複雑に書くよりも上所や脇附で礼の厚薄をつける

之に対して充所に於いては、充所の主体を複雑に書くよりも主体の他に、上所并に脇附を多く、而もその鄭重な意味を示す文言を附ける程、先方に向って敬意を払う書式となっている。上所に於いては、進々上、進上、謹上と礼に厚きより薄きに下るものと次第して…

差出所は複雑になるほど書礼は厚くなる

二 書礼の通法 以上十七項に分けた各種の書式に就いて一通り記述した。次にはこれら各種の書式に通じた例式に就いて説明しなければならぬ。 先づ各種の書式を差出所の構成形式に依って次第したが、之を通覧して知るところは、差出所は複雑になればなる程、書…

肩書略さず書いたものから略したものへ

肩書に略さずに書いたものと、略したものと、何れが先に生じたかと云えば、前掲の諸例に見る如く略さずに書いたものが早く起こり、中途から之を略することが始まったものと思われる。略書しないものが、略書したものよりも多分の鄭重さを表していることは申…

時代が遅くなると現れる官名の上の二字をとった略し方

この越前朝倉家の老臣山崎吉家朝倉景連の連署状は、永禄八年のもので、かかる書式のものとして管見に於ける最も早い例である。かような略書の実例は、天正年間の文書から多く現れている。〔二〕の如き「小」は「小早川」を、「又四」は仮名「又四郎」を略し…

朝玄は、朝倉玄蕃頭の略書

一七 苗字と官或いは仮名とを略記して名字と花押とを書いたもの 差出所に取り入れる文言を省略して表したものがある。名字と花押とを書いた肩に、苗字と官或いは仮名とを略書して添えたものがこの書式である。〔一〕の差出所に、吉家(花押)と書いた肩に山…

例の少ない位階と名字と花押とを書いたもの

一六 位階と名字と花押とを書いたもの 位階と名字とを書き、之に花押を加えた書式である。之も例が多くありそうに思われて、実際には少ないものである。例示した〔一〕は、本文書止めを「恐惶謹言」で結び、脇附に「御同宿中」と附けてある。〔二〕も前と同…

例が少ない氏と名字と花押

一五 氏と名字と花押とを書いたもの 氏と名字を書き之に花押を加えた書式である。一寸沢山ありそうに思われて、その実この部類として挙げ得るものは極めてその例が少ない。例示したのはその一例で、書止めを「恐惶謹言」と結び、上所に「謹上」、且つ脇附に…

官と氏と名字と花押とを書いた至極鄭重な書礼

一四 官と氏と名字と花押とを書いたもの 官と氏と名字とに花押を加えた書式がある。この部類に入るものとして例示した如く、本文書止めを「恐惶謹言」で結び、上所として「謹上」を添えたものがある。この文書は返事の意味の請文であって、披露を請う形式に…

証文類の差出所の書式から来たもの

書札様の文書に、この項の如き書礼の現れてくるのは、先の嘉吉元年の如き異例もあるが、概して室町時代末期からである。之は後部に述べる証文類の差出所の書式から来たものと考えられる。兎に角苗字が差出所に入って来たことは注意すべき現象と云わねばなら…

差出所并に充所を日附の前におく異様な書式

この書式で、日附に年号を附けたものもある。〔五〕の如きはこの一例であり、書止めに「状如件」と書いているのは通例であるが、差出所并に充所を日附の前におく異様な書式をとったものがある。之は正常な書式とは認め難いが、疑なき正文である。又〔六〕の…

名字・花押の肩に苗字と官名を記した書式

一三 苗字と官と名字并に花押とを書いたもの 名字と花押とを書いた肩に、苗字と官名とを記した書式のものもある。この書式は、前第九項が更に鄭重さを増したものと見るべきである。この部類に入るものとしては、〔一〕の如く本文書止めに「穴堅」と結んだも…

官を附けた方が、苗字を附けたものより鄭重

この項のものは、先の第五項のものよりも、名字が加わっているだけに、同人の文書に就いては、この方が多分に鄭重さを表していると見るべきである。 尚前第一一項の苗字とこの項の官名と何れが鄭重かというに、先のものに例が少ないので、的確な判断は下し難…

室町時代から見える官を名字と花押を書いた行の肩に添える書式

右に挙げた書式は、官と名字と花押とを書くに、之を一行に書き下したものであるが、官を名字と花押とを書いた行の肩に添えて書くものもある。この書式は、余り早くから見えずして、漸く室町時代から現れて来る。 この書式の中には、〔六〕の如く本文書止めを…

名字の裏に花押を据える

次に〔三〕の如く披露を請う形式で、書止めが前と同じで、上所に「進上」と附けて、敬意を表したものがある。又〔三〕と同じように披露式であるが、差出所に加えた花押が、特に名字の裏に書いてある〔四〕の如きがある。名字の裏に花押を据えるのは、表に於…

異なる封紙の上書の形式

一二 官と名字と花押とを書いたもの この部類に入るものとしては、〔一〕の如く、本文書止めに「恐々謹言」と結んだものがある。次に〔二〕は、書止めを「恐惶謹言」と変えている。之は前掲の諸例に見るところであるが、封紙の上書の形式に於いて〔一〕と大…

苗字と名字を記すに肩書の形式をとり、附年号となっている

この書式で、日附に年号を附けたものは稀にある。〔三〕はその一例で、本文書止めは、「恐々謹言」で結んである。 かく差出所に苗字と名字とを記すに当たって、この両者を一行に書下したものは無く、皆肩書の形式を執っている。又日附に年号を附けるに、附年…

苗字と名字と花押 北條 氏綱(花押)

一一 苗字と名字と花押とを書いたもの 先に挙げた官名に代えるに苗字を以てし、而も之を名字の肩に附けたものがある。〔一〕はその一例である。この書式は室町時代の中頃から現れている。〔一〕の本文書止めは、〔恐々謹言〕で結んでいる。〔二〕は苗字でな…

日付に年号を附けた公の意味を持った文書

次にこの書式のものに、日附に年号を附けたものの多いことは、公の意味を持った文書であるからである。そこに公の書礼として年号を附けてはいるが、〔一六〕以下の例に見る如く、本文書止めに於いて、可然敬語を用い、通例の「状如件」などを用いていないの…

名字と花押、官と花押

次にこの第一〇項のものが第四項即ち名字のみのものより鄭重さを示している事は申す迄もない。然し、第五項官と花押とを書いたものとは如何ということになると、簡単に之を決めることができない。先づ官と名字とを加えた方が、名字と花押とを加えたものより…

「恐々謹言」より敬意を表した「恐惶謹言」

然し本文書止めに可然鄭重さを表して、両者の中間の書礼を表している。この場合には本文書止めの示す敬意の程度を考慮する必要がある。例えば花押のみで「恐惶謹言」と、名字と花押とある上に「恐々謹言」と書いた両様に就いて見る場合に、「恐惶」が「恐々…

公家と武家の相違

尚第九項と順を逐っているが、第八項以前よりこの項以下が書礼に於いて鄭重さを示しているわけではない。之は右に述べた如き公家と武家との相違があり、即ち公家の人々には、先づこの項以下の書式が少ないから、第八項以上の全部に就いて第九項以下のものと…