2021-01-01から1年間の記事一覧

直状と奉書

前者は通例消息、或いは書状と、後者は奉書、或いは御教書と呼んでいる。書札様と総称するものの中には、かように直接的に出すものと間接的に出すものとの二様あることを区別しておく必要がある。この両者も説明の便宜上仮に前者を直状、後者を奉書と総括し…

将軍義勝の仰を承った細川持之の奉書

が、次に、 於播州城山以下、致忠誠之條、尤神妙之由、所被仰下也、仍執達 如件、 嘉吉元年九月廿六日 右京大夫(持之)(花押) 小早川又太郎殿 は、同じ凞平の城山の戦功を褒するために出した文書であるが、文中に仰下さるる所なりとあるは、将軍義勝の仰…

差出者が直接出すものと上位の者の意を承けて出すものの二様

更にこの書札様の文書は、文書を差出す人の地位に依って、差出者が直接その文書を出す形式と、差出者として文書に現れる者が、その上位に居る者の意を承けて出す形式との二様に分かれている。例えば、 去十月、城山要害落居、誠目出候、恐々謹言、 (嘉吉元…

差出者と受取者との地位の関係

要するに、消息書状には、本文の書始め、書止め、差出所、充所を種々に書き分けて、そこに書礼を表したのである。之は差出者と受取者との地位の上に於ける関係に依るものであって、文書の書式から、この関係を理解することができる。かような次第で、消息書…

上所と脇附

次に進上云々の一行が充所である。この充所は、進上と、東大寺別当御室と、小舎人所の三部から成っている。進上と書いてあるものを、同じく書札の儀礼で、上所といい、小舎人所を脇附と申している。御室は殿、様に当たる敬語である。この敬語は、何れの書状…

中世の書札の儀礼上、下附という術語で呼ばれる

次に日附の下に、前加賀守源と書き、その下に草名を書き、更にその下に、特に上と書き添えてある。この一行が差出所であるが、この書き振りは、かなり鄭重であり、更に簡略なものもある。上と附けたのは、特に経緯を表すためであって、これを中世に於ける書…

前加賀守から東大寺別当充て書状

右の文書は、前加賀守源頼房が、東大寺別当に向け、同寺の近江周防両国の御封米の事に関して出した書状である。本文の書始めに、跪きて上啓と書いてあるのは、書状の特有の充名人を尊敬した書方であり、又書終わりに頼房誠恐謹言と書いてあるのも鄭重な書き…

書札様の文書の形式の特色

書札様の文書の形式の特色は、その文書に差出所と充所とを具え、且つその書式を、差出者と受取者との社会的地位に依って種々に書き変え、且つ差出所、充所の要素に種々のものを附加して、儀礼の厚薄を表そうとしたところにある。今その事例を示すに、(略)…

書状消息と云われる書札様文書

第三部 書札様文書 第二部に記述した文書は、公の政治に関した文書の形式を具えたもの、若しくはその形式の変化した書式を具えたものであった。之に対して普通書状消息と云われる文書の書式を具えたものがある。今仮にこの形式を具えた文書を書札様の文書と…

吉田社斎場所太元宮の八角

三箇所に朱印を二つづつ捺し、然もその一は正位に捺したものの上に斜に捺し、二つの印影に依って、周囲に八角が現れている。これは蓋し兼倶の創建した吉田社斎場所太元宮の八角と同じ意味を表徴するものと思われる。料紙は宿紙、即ち薄墨紙を用いている。こ…

吉田家から出される宗源宣旨

宗源宣旨とは吉田家から諸国の神社に神格等を授けるために出す文書の一種である。兼倶の時から始まると云う。〔二三二〕に挙げたのはその一例、永正十年八月十三日兼倶の次の兼致が、肥前與賀庄内の淀姫大明神を極位の神となすためにだしたものである。日下…

徳政に関する寺法

〔二三一〕に示したのは案文であるが、本文の中に壁書と記している。嘉吉元年十二月、京都西興寺に於ける徳政に関する寺法である。徳政が実施されれば、貸借の契約が無効になったのであるが、この寺法にては本金利息共に支払うべきことを定めたのである。と…

大徳寺役僧等連署壁書

ここに図版に示したのは、大徳寺三役者即ち納所、侍真、維那に関して、住持諸塔頭の院主が互いに取り極めた掟を示した文書である。本文の中に前壁書に任せとあるから、之も壁書と称したのであろう。然しこの文書は実際壁間に貼ったものの如き形貌を呈してい…

屋内の壁間に張り出した壁書、張文

第一〇種 壁書 上述の定文掟書に属するもので、特に壁書と称しているものがある。遵守すべき事項を衆人に示すために、定文壁書を屋内の壁間に張り出したところから、この名称が起こったものであろう。また張り出すことから、張文と称することもあった。との…

無碍光(むげこう)阿弥陀仏の発する十二光の一

〔二二九〕は、永正十八年二月、越後の長尾為景并にその一族等が、無碍光衆(一向宗)禁絶のために守るべき条項を示した掟書である。 〔二三〇〕は、掟書の一種で、差出所も日附も欠いている。天文十三四年のものと推定し得る。とのことです。 ※無碍光(むげ…

掟書、規式

第九種 掟書 遵守すべき条項を示すために作った文書を定文とも云うが、又掟書、規式とも云っている。 〔二二八〕に挙げたのは、応安八(天授元)年正月十一日、円覚寺評定衆が寺中寮舎に関する規約を示すために作った文書である。掟書とも規式とも称して差し…

祭祀仏事費用の明細、相節(そうせち)帳

第八種 相節帳 祭祀仏事等の費用の使途を定めて、之を明細に記して諸人に示す文書を相節帳と云う。又時に文章の点から定文と称して適当するものもある。相節帳は特に相折帳と書くこともある。蓋し音通に依る誤用であろう。〔二二七〕に挙げたのは建久五年四…

高野山の石町卒塔婆

〔二二五〕は弘安八年十月、同山の石町卒塔婆造立供養の請定である。極めて多数の僧侶の名が記してあるが、何れも承諾せる由を「奉」と書いて示している。〔二二六〕は、貞応二年七月十日、春日社廻廊修造石壇造石の運送役を仰せ付けた文書であるが、之も請…

「奉」か「故障」かを記入

〔二二三〕は、建永二年三月一日、東寺大師御影供の請定、「奉」は参勤を承諾せる由、「故障」は参勤し難き旨を返事としてこの廻文を受けた人々が記入したのである。次に〔二二四〕は、嘉禄元年九月、高野山蓮華乗院に於ける本願前齋院五辻宮の御忌日の仏事…

僧侶に触れ廻す請定(しょうじょう)

第七種 請定 僧侶に仏事等を行うとき、その役僧として参勤すべき者の名を連記して触れ廻す文書を請定(しょうじょう)と云う。僧侶以外の人々に対するものであると、前記の如く之を廻文と称していたのである。とのことです。

平安末期から伝わる後七日御修法の継文

次に〔二二二〕は、永暦二年正月宮中真言院に於いて、後七日の御修法を修する時参勤すべき僧侶の名を書いて示した文書である。東寺長者が、この御修法の導師を勤めたのであって、同寺には、平安時代末期から江戸時代に及ぶ連年、この御修法の交名が数巻に納…

散状もしくは交名

第六種 散状・交名 広く人名を書いて示した文書を散状若しくは交名と云う。この中には諸役に参勤すべき人を書いて示したものが多い。〔二二一〕に挙げたものは、永享十年九月四日右大臣近衛房嗣が左大臣に、内大臣鷹司房平が右大臣に任ぜられた時に、その節…

蒙古襲来合戦の翌年の番役を命じた定文

次に〔二一九〕に挙げた文書は、かの文永十一年の初度の蒙古襲来合戦の翌年、なお襲来を予期して、博多湾沿岸防備のため、鎮西九箇国の地頭御家人に警固の番役を命じた時、九箇国を四季に分けて勤仕すべき次第を定めた定文である。 なお〔二二〇〕は、徳治二…

量仁親王元服の定文

左に此等を次第して例示する。 〔二一七〕は、元徳元年十二月八日、光厳院(量仁親王)御元服の折に於ける雑事定の定文である。かような公事に関する定文は、上卿が執筆することがある。次に〔二一八〕に示したのは、原本では無く勘仲記の中から引いて示した…

定文、壁書、規式、掟書

第五種 定文 この部類の形式を具えた文書の中に、取定めた事項を記し、或いは事を進めて行く次第を示し、或いはまた行為として守るべき規定を示すために作る文書がある。この文書を、定文、壁書、規式、掟書等と称している。とのことです。

別当宣とも称した廻文

〔二一六〕は、正慶元(元弘二)年九月五日、検非違使庁から知足院の地に関する訴論人に出頭を促すために出した廻文である。別当宣に依って廻すと書いてある。従ってこの文書を別当宣とも称したのであろう。とのことです。

戒光寺・東大寺両者への廻文

〔二一五〕は、康永三(興国五)年三月十八日文殿から伊賀国内保庄に関する相論の訴論両者たる戒光寺と東大寺とに向かって、出頭を促す為の廻文である。東大寺の返事は、京都に出京している雑掌が書いたものであろう。その下に文書を持参せよとの事など、重…

立后節會の廻文

〔二一四〕は、元応元年閏七月、立后節會に出仕すべき由を、史に触れた時のものである。この触れを受くべきものの名を始めに書くのが、この種文書のきまりである。而してこの各々の名の下に返事を書くととなっている。「奉」とあるのは承諾せる意味を表して…

訴論両方に出頭すべき由を知らす廻文

第四種 廻文 二人以上の者に、諸役に参勤すべき由、若くは訴訟の沙汰の為め訴論両方に出頭すべき由を触れ知らす為めに出す文書を廻文と云う。この廻文には、返事として承知せる由、若くは何かの事情に依り出仕、出頭致し難き由を記載す。かくてこの廻文は元…

版刻の度縁、戒牒の印

尚お慶清、圓爾、慧廣の度縁が、何れも版刻であることは、印刷史の資料として、又大乗戒牒の戒目代、戒行事の印は、印の歴史を見る上に珍しい資料として、何れも注意すべきものである。 度縁戒牒は古来多数発行せられたわけであるが、叙上の如くその実物の伝…