口宣、上卿に与えた控えか、懐中に秘めたものか

まず職事が勅旨を伝える場合、これを文書に表したものを口宣書とも称した。実物の伝わる早い時のものはないが、兵範記仁安二年十二月十三日の条にある文書が管見に入った最古のものである。中右記にも口宣という言葉が現れているが、それに当たる文書は同記…

辨官から出す一を宣旨、他を官宣旨と称す

第二種 宣旨 第三種 口宣案 蔵人所の設置があってから、内侍が勅旨を蔵人の職事に伝えた。そして職事から上卿すなわちその日の政事を扱う上首の公卿がこれを受け、上卿がこれを各所に伝えたのである。その伝宣を受けるところは勅旨によって伝える事柄に依り…

女房奉書の前身、内侍宣

第一種 内侍宣 第二種 宣旨 第三種 口宣案 第四種 官宣旨 大宝令後宮職員令に内侍司が挙げてあるがこの司の役員は悉く女性であり、そのかみは尚侍といって二人あり、常時側近に侍り、奏請および宣伝などのことを司っていた。宣伝はすなわち勅旨の伝宣であっ…

宣、宣旨の先蹤、内侍宣

第一類 宣 宣旨 勅旨は詔書、宣命、勅書、勅符、位記によって下に伝えられていた。ところが平安時代に至り、蔵人所の設置のことなどがあり、漸次勅旨伝宣に関する制規のうえにも変化が起こり、文書も変化した。詔書勅書のごとき手段を取らず簡単な手続きによ…

公式令の足らざるところを補う文書

第二部 平安時代以来の公文書 に入ります。 まずは全体から 第一類 宣 宣旨 第二類 家別當宣 第三類 下文 第四類 下知状 第五類 下文変形文書 第六類 雑公文 第一部に記述した公式令にその様式を示してある文書は、律令制度の制定と同時に定められたものであ…

個人の解、啓上と近似した書式

個人から出した解で注意すべきものは、〔六七〕丸部足人解である。極めて鄭重な文言を用い、且つ充所に尊者御足下と書いている。この充所の書きぶりは、当時の私状たる啓状のものと同じである。前項の個人の牒と同様に、個人の解にも啓状と近似した書式を具…

宣命体の解

畫指は無筆の者が行ったものであることは、戸令の明文によって疑うべきもない。しかし鎌倉時代の初期、文治年間のものを最後として、畫指のある文書は、今日遺存していないらしい。この時代から無筆者はいなくなったのかというとそうではない。別の方法が案…

畫指の時代による変化

畫指の方法に二種類がある。一つは上記のもので、もう一つは点の間に線を引いてこれを継いでいるものである。そして左指と書いてある。畫指の規定は戸令にも見えているから、もちろん日本人の発明ではなく、中国の制規にならったものと思われる。唐代の古文…

指を畫いて記と為せよ

第一七図も個人から出した解である。日佐眞月・土師石國ら四人が雑材木を運漕することを命ぜられ、運漕すべき材木と、その運賃として支給された米銭に対する請取状ともいうべき文書である。右云々からは、八月十二日までに記載の数量の材木を樣(てへん)漕し…

官庁に準ずべき所、諸家、私人から出された解

解には、官庁に準ずべき所、諸家、私人から出したものもある。 〔六三〕は、大安寺に於いて盧舎那仏を作る料に丹を申し請うもの。 〔六四〕は、南藤原夫人家から東大寺写経所に、写経の経師の借用を申し請うもの。 〔六五〕は、写経師、中室浄人が、身に過の…

券文は売買当事者で取り交わす証文へと変化

さてこの文書は、京都における家地売買にあたって正式に立てた券文である。地方においては坊令が郷長に代わり、この郷長の解に対し、職判に代わって郡判、国判が加えられて成立するものであった。この規式は大体平安時代中期まで守られていたのであるけれど…

数百年にわたる手継の証文

図版に示した左側の文書は、右の売買券に見えている買主たる源理というものが、売買のあった延喜十二年より七年後の延喜十九年に、同じ家地を息男市童とその母橘美子に譲与したときの証文である。このように家地田畠等を譲与するときに作る証文を処分状とい…

解と処分状との中央に「毀」の一字

解と処分状との中央に「毀」の一字を大書し、その上に職印が捺してあるのは、この後延喜七年十月十日に、さらにこの家地の売買があって、同様の手続きをとった時に加えたものであろう。 「毀つ」とは、売買の行為を証拠づける文書の効力を否認する意味であろ…

捺印によって売買の券文が成立

この解を受けた左京職においては、左京職云々の文言をその奥に書き、取り扱った年月日を記し、終わりに大夫、亮以下の職員が署名を加えている。「左京職判ス」とは左京職の判を捺すという意味、「家券二通を収む」とは、令から売買に関する解二通を受けた意…

辞状を受けて審査を加え、誤りなかったので解を作る

第一行「七条令解 申立売買家券文事」は、解の書出しの例文である。 第二行「合壱区地肆戸主 在一坊十五町西一行北四五六七門」以下の六行は、売買した家地とその地上にある家屋の種目の大きさを示している。戸主とは家屋の敷地の広さを示す。 第七行「右、…

四坊に令(れい)ひとりを置く

第一六図は、二通の文書から成っている。はじめが、解の様式で、京都左京の七条の令が、その管内の者が家地即ち敷地を売買したことを、上官たる左京職に上申し、その認可を請うために進めたものである。 京都はこれを各坊に分け、坊ごとに長一人を置き、さら…

家地売買の解

正倉院文書のなかに前記戸籍等とともに数多く伝わっている諸帳のなかからその一例として天平十二年の遠江国浜名郡の輸租帳を示すと〔六一〕のようなものである。 なお、前掲国司の解に引用してある郡解と申すものを例示するに、〔六二〕は、紀伊国在田郡司が…

大書、壹、貳、參、肆、伍、陸、漆、捌、玖

第一五図の右端の部分は、戸籍一巻の表題である。当時の戸籍の外形をこれによってうかがうことができる。冒頭の廿二張の三字は別筆であるが、当時加えた筆跡と思われる。紙の量を呼ぶのに何枚といわず何張と言っている。 戸籍は正楷を以って謹書する定めであ…

大日本古文書の誤り

〔六〇〕に校訂者註がついてました。 大日本古文書にはこの奥に大宝二年十一月の日付及び国郡司の署名を記した断簡を載せている。郡司の署名には「福善」とあるが、これは御野国味蜂(安八)郡春部里戸籍の署名の部分にも見えている。春部里戸籍の署名の部分…

我が国古文書の最古、大宝二年の戸籍

正倉院文書には、計帳もあり、計帳を基にして、六年に一度作った戸籍も伝わっている。国司から注進したものだが、明らかに解の形式をとっていない。解の式をとった計帳等と関係が深いので、便宜上ここに挙げて説明する。これら戸籍のうち、大宝二年のものが…

四度使(よどのつかい)公文を持参して上京

諸国司から中央の太政官に上げる文書はすべて解を用いた。前記下総国・但馬国のものはその例である。これは臨時に奴婢貢進に関して上げたものであるが、国司から時を定めて奉る文書にも解を用いている。 四度使(よどのつかい)すなわち大計帳使が、年々戸口…

自署と花押との使い分け

解は広い範囲に亙って用いた。〔五八〕神祇官→太政官、賀陽致貞を備中国の吉備津彦社神主代官に補せんことを請うために出したもの、端裏書は、この解には関係ない記事、次の「依請」、請うに依れの二字は、解文に依る申請を裁許せる意味を表したもので外題と…

充所を書かない、解

解は官司において被管から所管に上げる文書である。符と逆である。解には官司に準ずる所、若しくは諸家諸人から、その上に位する所に向かって上げる文書もあった。 第一四図 下総国司→太政官 国司は太政官の被管だから、解を以て上申したのである。下総国香…

太政官奏の奏事式と便奏式

〔五七〕は太政官奏、奏事式の一例。類聚三代格。 公式令によると、年月の次に太政大臣以下三公大納言の位署があり、次行に「奉勅依奏」と裁定せられし趣を、もし勅語があれは、その趣を記し奉り、次に大納言が位署を加えることとなっている。奏事式には、御…

太政官から奏聞して勅裁を仰ぐ、奏

第八類 奏 奏は、太政官から事を奏聞して勅裁を仰ぐために上げる文書である。公式令に奏聞する物事の軽重によって、論奏式、奏事式、便奏式の三種に分けている。奏の正文は伝わっていない。六国史もしくは類聚三大格に収めてあるものによってみるにすぎない。…

消息書状と体裁を同じくする牒

〔五三〕安都雄足→東大寺写経所の案主等、写経の事務に関して出した牒、端裏に差出書を記して封を加えている。のちに現れてくる私信たる消息書状とその体裁をおなじくするものである。 〔五四〕池原禾守の牒のごとく宛所を欠き、単に書き出しに牒と記したも…

近代絶えて奉らず

〔五一〕僧教演→写経所 書き出しが牒云々とあり、公式令の示すところにより近似した書式を具えている。 〔五二〕台記に載せてある藤原頼長の暇文、公式令の牒式と極めて似ている。本文中には出ないが、蔵人所に奉ったものである。台記には、暇文は近代絶えて…

個人である官人から出した牒

官司の間において、所管被管の関係にある場合、下位の者から上位の者に上げる文書の式は解であって、これについては公式令に規定が示してある。ここにいう牒式は、そのような官司の間におけるものではなく、個人である官人から出す文書のことである。 〔五〇…

個人から出す牒もある

以上述べてきたのは、官司もしくはこれに準ずべき者から出す牒に関するものであった。牒には、このほかに個人からだすものもあった。公式令に、内外の官人主典以上が、事に縁って諸司に申牒する文書の書式として牒式が挙げてある。 書き出しに「牒す」と記し…

「牒」と書くか、「下」と書くか

牒の特質 移は相管隷しない官司の間に用いることに限っていた。ところが牒は、差し出す側に官司もしくはこれに準ずべき者があり、受けるべき側にも範囲に限定をみない。所管・被管の関係に無い者の間で取り交わすものとなり、従来の移の性質に成り代るように…