酷似している今川義元と大道寺政繁の印判

年附は無いが、恐らく天正十年前後のものであろう。当時の訴訟の制規が窺われる。日下に朱印が捺してある。ところがこの印が、駿河今川義元の「義元」の二字を印文にしたものと酷似していて、従来之を義元のものと見做していたが、仔細に観ると明らかに相違があり、他の史料に依って研究してみると、之が政繁の印判であることが判明した。花押が頗る類似していることは往々にしてあるが、印判が見誤る程類似しているのは極めて稀である。所が変わり、又時を隔てていると、自から暗合するように類似の印が出現することもあった事実を、右の文書に依って知ることができる。印の鑑識上心得ておくべきことであろう。とのことです。