日附に年号を加えるのは薄礼

先に述べた如く、この部類には年附のあるものは稀である。〔六〕は少ない中のその一例である。本文書止め」に、「言上如件、某頓首誠恐謹言」と結び、下附に「奉」、上所に「進上」と書いているが、何れも前掲の諸例と異なったところはない。思うにこの部類即ち官と氏と名都の三つを差出所に記すことは鄭重な書礼であり、書札様の文書に於いては、この書礼では、日附に年号を記さないのを通例としていたと見るべきである。之が官名と氏が省かれると、そこに鄭重さが減じて、日附にも年号を附けるものが多くなったと考えられる。この事実に依っても、書札様の文書に於いては、日附に年号を加えるのを、礼の厚き書き方と致していなかったことが判るのである。とのことです。