年号のないほうが厚い書礼

この項の書式で、書止めに敬語を附けた例は多くない。即ち〔二二〕の如く「謹言」、〔二三〕の如く「恐々謹言」と書いたものは類が少ない。

この項の中に於いて、日附が月日のみのものと、之に年号を附けたものとの、書礼における厚薄の程度は、充所の書き様に依っては、両者の間に差異を認め難いが、本文書止めの例文に於いて、年号の無いものの方にあるものの方よりも鄭重な言葉の用いてある点から点から見て、先づ年号の無きものの方を、厚き書礼を表しているものと見るべきであろう。元来公式令以来の公文書には、年号の附いているのが当然であり、かかる公的性質の文書書式の構成要素が、書札様の文書に入っているとすれば、その点に就いてのみ考えて見ても、そこに差出所から充所に向かって、一種の強い威力を示していると見るべきであろう。

次に第一項より第二項が、書礼に於いて厚いことは更めて申す迄もない。とのことです。