永禄年間から伝馬手形専用の印を用いた武田氏

更に本文の中程に目を注ぐと、そこにも何か一つ印が捺してある。これは「傳馬」の二字を印文とした朱印で、掟書の第一条に云う伝馬の手形に捺す印判とは之を指すのである。この印の捺してあるところは、紙継目の表であって、普通の継目印のようにも思われるが、実は第一条に云うところの印の印鑑として示したものとも考えられる。この伝馬の印の始めて見えるのは、永禄十一年の手形に捺したものである。武田氏の伝馬手形には、他の印判状と同様龍の朱印を捺していたが、永禄年間から、かかる伝馬の二字を印文とする印を作り、之を伝馬手形の専用に充てたのである。かかる伝馬手形専用の印使用の沿革は、相模の北条氏に於いても同様であった。とのことです。