京都や西国地方には見いだせない横ノ内折式

この封紙の横ノ内折式と、特殊な封式を具えた文書は、京都や西国地方に於いては全然行われず、大体越前及び尾張以東、出羽陸奥に至り、関東を中心にした所謂東国地方と九州の一角肥前の北部地方に行われたもののみ遺っており、古文書に於ける地方的特色とし…

横ノ内折では封紙の差出所充所が極めて簡略

次に少しく記すべきは、かかる特殊の封式の場合、本文の差出所充所と封紙のそれらとの関係である。この封式では、封紙の差出所充所は、本紙のそれよりも極めて簡略になるものがあり、そのままでは何人が出したか明瞭に致し難い程の書状もある。この点に就い…

旧来の折紙と新しい特殊な封式との混合した形式

尚これに類似して、多少相違した点を具えたものがあり、又上の図版に示すが如く、折紙とこの特別な封式とが混合したもの等数種ある。 (略) この文書は、(天正十二年)五月五日、伊勢長島城に居った織田信雄から、尾張竹鼻の不破源六広綱に充てたもの、先づ…

紙面の上下が三分一づつ失われている

封じ目の後は残っているが、如何に封を加えたか、具体的な点は明らかでない。然し料紙の左方封紙に代用した紙面の上下が、約三分一づつ失われているのは、この失われた紙は、その紙の右となったところを上下縦に切って、上下に折り込んで封を開くと封じ目が…

田村清顕の白川晴綱宛書状

又かかる料紙の折り方をし、而もその料紙を切らず、その一部を封紙に充てて、封を調えるものもある。之を図版(第一三七図)に示すと、左の如きものである。(略) この文書は、陸奥三春の田村清顕が、同国白河の白川晴綱に送った書状である。図に現れた横の…

折封と切封とが合わさった封式と料紙の横ノ内折とは相応する

この横ノ内折の場合には、上包の封の仕方にも特色をもっている。上包の料紙で本紙を包んだ後、上包が本紙の文よりも余るが、この余った部分を、上下共に裏へ折り返し、その折り返したところを、紙縒で結ぶ、ここまでは先に述べた折封と同様である。然るにこ…

横ノ内折

かように折り畳んで、その上に上包の紙を懸けて封が施してある。最初料紙を横に内側に折ることが特色であるから、これを特に料紙の横ノ内折と称して置く。この横ノ内折は、二筋或いは三筋に折ることがある。この折り方に調えた料紙は竪に細く切ったもの計り…

結果として折紙の形式と相似るように調えられた形式

さてこの文書の形状を子細に観察すると、竪に長いことに気付かれるであろう。これは料紙を竪に切って用いているのである。更に紙面の中央を注視すると、横に折った筋目のあることにも気付かれるであろう。これは文字を書き署判を終えて、料紙を折る時に、先…

今川氏真の北条氏家臣大藤政信宛感状

(略) この文書は、永禄十二年六月武田信玄が駿河富士郡の大宮城を攻めた頃、北条氏の家臣大藤政信が伏兵を出して、駿河から甲斐に塩を運送する者を討ち取り、敵国たる甲州勢の往復を絶った軍労を感謝する為に、今川氏真から出した感状である。この事実によ…

戦国時代に地方の特色を持った折り方が出現

次に更に料紙の折り方に遡って説明を重ねべきものがある。先に述べた料紙の折り方は、何れも京都を中心にした書礼の中に於いて行われているものであった。之が戦国時代になると、地方的の特色をもった折り方が現れ、之に連関した特殊な封紙も現れるに至った…

連署の書状は公家ではなく武家で用いられた

終わりに連署の書状に就いて特筆すべきは、この形式が公家の文書から盛んになったのでは無く、鎌倉時代武家の文書から大いに用いられるようになったことである。元来書状は個人的のものであって、一旦連署となれば、形式上その意味を離れて公の意味を持って…

肥後の相良家文書のうち、菊池氏老中等の文書

数人の中から封紙に二人の苗字官途を挙げる時には、実名をも挙げる人は本紙の日下に署判を加えた人、他の一人は最末即ち最上位の人とされている者である。右は肥後の相良家文書に就いて、同国菊池氏の老中等の文書を例として説いたものであるが、当時の家々…

三人以上の差出所、封紙の書き表し方

尚三人以上十人近く若しくはそれ以上に及ぶと、差出所に於いては、苗字官名は全部挙げるが、名字は一人だけに限る場合と、苗字官名を二人だけに限り、他は之を挙げず、名字は又一人に限っている場合とがある。然しこの後の場合、封紙に苗字官途を欠いたもの…

通例では実名を加えた人の苗字官名が第一行に表される

但し、この場合には二人の苗字官名を二行に書くが、実名はその中の一人のみ書くことになっている。これは三人以上の場合でも同様で、三人以上の苗字官名を三行に書くが、実名は一人に限っている。この場合に苗字官名が、本紙に実名と花押の加えてある順に書…

封紙の上書が一人に限っている場合

次に連署の場合、本紙と封紙との充所差出所は如何に書き表したものであろうか。先づ充所は何れも同じである。差出所は、連署が二人であると、封紙にはその中の一人のみが位署を表す。この一人が本紙の日下に位署を加えるものと、次行の人即ち上位とされてい…

充所が連名のとき右の人が最も上位

この封紙の上書に関係して述ぶべきは、連署、即ち二人以上の人が差出者となる場合の名の署判を書き表す順序である。この場合、日下即ち日附の下に署判を加え、之から遠ざかる程上位の人、即ち充所に最も近づく人が地位の高い者ということになっている。之が…

封紙の裏書御免許

此等二例は、目下に向かって出した書状の書式で、鄭重な儀礼を表しいているものでは無い。右の説明で判るように、差出所に就いて云えば、書礼が粗略であれば、封紙は本紙より簡単となり、鄭重であれば複雑に書き表すのが通例となっていたと見るべきである。…

封紙に花押のみ書く、又花押をも書かない形式もある

又本紙は官名と花押とであるが封紙に官名と名字を書き表し、鄭重になっているものもある。此等に対して本紙に花押のみ書いてあるときに、封紙に単に花押のみ書き本紙と封紙と少しも出入のない書き方があり、又封紙に花押をも書かず、即ち封紙には差出所を欠…

封紙の裏書に官名、或いは苗字と官名を書く

次に差出所は本紙のものと、封紙のものとは互いに相違するのが通例である。之は前掲の表示を通覧すれば明瞭に知られる。本紙は差出所が名字と花押とであると、封紙には花押を加えず、名字のみとなり、その代わりに、先に御内書の項で述べた封紙の裏書に、官…

封の充所は本紙と固有名詞の重なるのを避ける

本紙の充所に、上所「謹上」とあって、封の充所に之を欠いていることは無い。室町幕府奉行人の竪紙の奉書は、明らかに封紙を用いたものであって、今日多く伝わっている。その充所には、本紙のものに「當寺雑掌」と書いてあるのが、「大徳寺雑掌」となってい…

封紙、若しくは捻文、腰文の形式を整えた封

一体この封紙、若しくは捻文、腰文の形式を整えた封には、如何なる文言を書くかと云うに、それは申すまでも無く、差出所と充所とであった。便宜充所から説くこととする。充所は、その主体も上所も脇附も、本紙即ち中味のものと同一であるのが通例である。と…

折紙を用いた文書は封紙の伝わる例は極めて少ない

切紙の封紙は本紙より大抵小形のものを用いている。一般に折紙を用いた文書と云えば室町幕府奉行衆の奉書を始め、多くの人々のものが伝わっているが、その封紙の知多悪文書は極めて少ない。殊に奉行衆の奉書の如きはは、管見に入ったものがない。これ等折紙…

豊臣秀吉の直書朱印状は中味と封紙で料紙が異なる

次に封紙は中味の本紙若しくは本紙礼紙と、紙の質に於いて如何なる関係にあるかと云うに、通例は、両者は同一の紙質のものである。然し時に異なっていることがある。殊に豊臣秀吉の折紙に書いた直書朱印状を封ずる為に用いた料紙は、中味が大高檀紙と云う極…

礼紙を加えた折り紙の折り方

尚折紙には、礼紙を中に加えた場合があるが、この時には、紙が四葉重なることになり、之を竪に折るには、折り悪くく、又折り上げた形態が歪んで不体裁になる嫌がある。之を避ける為に、折り筋を左右二箇所、若しくは左右に間中を加えて三箇所切って、四葉の…

豊後大友氏の切封の文書

かかる例が室町時代から現れ、その中期以後に於ける幕府奉行人の奉書は、皆この式をとっていると申して差支えない。又豊後大友氏の文書の中にもこの式があり、之には折り畳み終わって書き始めからの半面の右端に切封の紙縒を切って、それで切封を加えている…

一枚の竪紙で本紙と礼紙と背合わせに折り畳む式

尚竪紙の場合、紙面に文章を書き終えると、料紙の中央に於いて竪に外側に向けて折る。即ち書き始めからその中央の折り目までの半面と、次にその折り目から書き終わり迄の半面とを背合わせにして、その折り目から右即ち書き始めの方へ向かって折り畳むことが…

竪紙、切紙、折紙の折り方

この竪紙の折り方は、本紙のみのとき、又本紙と礼紙とを併せて調えたときと、別に異なる点はなく、一様に料紙の左端から右へと折り進んで折り終わるのである。切紙の場合に於いては、たいてい本紙のみであるが、之も折り方は同じである。次に折紙、すなわち…

竪紙と紛らわしい封紙の立紙

料紙が竪紙即ち通例の如く紙を横にして用いたときに、その料紙を竪紙と云う。之は先に述べた封紙の立紙と紛らわしいが、横長のものをそのままにして上から下へ文字を書く料紙に用いたのを竪紙と云い、封紙の為に竪に立てて用いる即ち封紙を立紙と云う。との…

封式と料紙の切り方、大きさによって複雑化した文書の形態

右に記した封式と料紙の切り方、并にその大きさに依って、文書の形態が種々複雑化して来たことは申す迄もない。更に文書の料紙の折り方と、之に関連した特殊な封式に就いて説明を進める。とのことです。

豊後守護大友氏に下した室町将軍家の大小区々の切紙の御内書

この切紙の大きさは大小区々であって、その間に如何なる制規があるものか、殆ど窺い知ることができない。今ここに同じ室町将軍家から、豊後の守護大友氏の歴代に下した御内書にして、その料紙に切紙を用い、その大きさの区々たる状況を調査した結果に依ると…