病気という語を忌んで、「歓楽」と書く

尚お前掲二通の過所の中、先のものは料紙が折紙で、後のものは普通の竪紙である。過所にはこの両様の区別があった。後のものの形式が、丁重な書礼である。又先の過所の差出所に、歓楽と書いて花押の無いのは、その折奉行が病気の為めに、花押を書くことが能きなかったからである。歓楽は病気と申す言葉を忌んで、殊更にその反語として用いたのである。之はこの一語に限るものでは無い。奉行は二人に限らないから、他の者が代理をすればよい筈であるが、過所奉行として定めてあることや、或は両人の奉行の間が組となっている関係から、一人が病気の時自由に他の奉行に代行させることが不可能であり、病気でもその人が位署を列ねることになるので、署判のところに右の如き断りを記すことになるのである。とのことです。