「五大力菩薩」の楕円形の小さい黒印

数多い条項の中に、玉薬を応分以上に用意せよとあるは、長篠に於ける武田勢の敗因の一が、織田徳川勢に新鋭の武器たる鉄砲がよく整っていた事に因ったことと思い合わせて興味がある。袖に捺してある印は例の龍の朱印であるが、紙継目表の上下二箇所に、「五大力菩薩」と白文に表した楕円形の小さい黒印が捺してあることは注意を惹く。継目が離れぬように、五大力菩薩の守護の力に祈念する心持を表しているのである。継目の封印に専ら用いたものと思われる。印文が印を捺す働きと直接関連している実例としては実に類稀である。印判史の資料として大いに珍重すべきものである。とのことです。