全体を大観する

 細かい立ち入った分析や検討に入る前には、まず全体を大観しておくこと―歴史研究にとってもいつも忘れてはならない注意なのだ

 石井進『中世の村を歩く』p.78

との言葉が示すとおり、精読に先立ってまずは本書の成り立ちを大観してみようと思います。

まず本書は、上巻と下巻に分かれていますが、上巻に前編と中編、下巻に後編が収められています。前編は古文書の伝来、中編は古文書の形様、後編は古文書の部類となっていて、後編は中編の分類法にそって実際の古文書が挙げられています。中編本文中に〔一四一〕などと表示されている場合は、後編の該当文書を参照するという具合です。

上巻は岩波書店により著者没後の昭和二十四年に刊行され、下巻は文部省の研究成果刊行費補助金を受けて昭和二十九年に刊行されました。

中編の章立ては以下の通りです。

第一部 公式様文書

第二部 平安時代以来の公文書

第三部 書札様文書

第四部 印判状

第五部 上申文書

第六部 神仏に奉る文書

第七部 諸証文

ちなみに佐藤進一『古文書学入門』の第三章の章立ては、

第一節 公式様文書

第二節 公家様文書

第三節 武家様文書

第四節 上申文書

第五節 証文類

となっています。公家様文書・武家様文書の取り扱い方が大きく異なっているようなので、注意していきたいと思います。