消息宣下、文書の作成が省略されるわけではない。

この消息宣下の場合、任官叙位の文書として口宣案のみが出るとは限らなかった。消息宣下の場合でも、任官に宣旨が、叙位に位記が出ることもある。

実隆公記明応五年六月五日の条に、前権大納言勧修寺教秀を大臣に准じ、従一位に叙した時の関係文書が写してあるが、それを見ると、蔵人頭左中辨中御門宣秀の叙従一位、准大臣の口宣案二通があり、これを宣秀が上卿たりし権大納言三條西実隆に伝宣した消息があり、さらに、実隆が、消息を以て職事の宣旨、すなわち口宣案の中一品の事のものを大内記に伝宣し、その消息にこの口宣案を巻き加え礼紙に宿紙を用いてこれを送っている。

また同時に大外記局に消息を以て准大臣事の口宣案を伝宣し、同様の処置をしてその口宣案を送っている。

次にこの伝宣を受けた大外記中原師富が奉じた宣旨と、大内記が作った位記が挙げてある。従一位准大臣の宣下であり、恐らく消息宣下の中でも最も重い事柄であったから、宣旨も位記も作られたものであるかも知れない。

しかし要するに消息宣下の特色は、宣下の手続きの簡便にあるのであって、必ずしも文書の作成が省略される点にあったのではない。この点は消息宣下に関して特に銘記しておく必要がある。とのことです。