伝宣を受くべき者に充てられるようになる口宣・消息

また次のごとき一例もある。

  奉入

   宣旨

    小渓和尚宜特賜佛智大通禅師号事、

  右、奉入如件、

      六月十三日    權大納言(花押)

      大内記局

これは大徳寺の八十六世紹怤(興臨院塔主)に、佛智大通禅師の号を賜った時の消息宣下における上卿の消息である。この消息に見える宣旨は、すなわち口宣案であり、これもこの消息と同様に、徽号を拝受するものに向けて送られたのであろう。

要するに、口宣といい、宣下の消息といい、勅旨伝宣の事務の上に作った文書であって、伝宣を受くべき者に充てた文書ではない。それが上に記したごとく、伝宣を受くべき者に充てられるようになったこととは、文書作成の意義を考える上に注意しておかねばならない。それと同時にこのような文書の当時から伝来したところを動かさぬように努めなければならない。もしそれが他所に移っていると、またこれに対して異なった解釈が下される恐れが生ずる。とのことです。