前述のごとく、叙位任官の場合、消息宣下によって伝宣せられると口宣案そのものが、本人に下るのであった。勅書の項で記した諡号徽号宣下も、陣議と消息宣下と両様あって、消息宣下の場合には、賜号の勅旨を伝えている口宣案が本人に下るものであった。次に挙げるものは、その一例である。
(端裏書)
「口宣案」
上卿 中御門新大納言(宣胤)
延徳二年十二月一日 宣旨
宗熈和尚
宜特賜正続大宗禅師
蔵人権左少辨藤原守光(広橋)奉
これは大徳寺塔頭松源院の塔主宗熈(春浦)に正続大宗禅師の徽号を賜った時の口宣案である。大徳寺には、口宣案以外に勅書が伝わっていないから、この口宣案のみによって宣下せられたとも考えられる。しかし他の人の場合に、口宣案によって宣下し、しかも勅書も賜っている例があるから、今日勅書が伝わらないからといって、上のごとく判断して誤りがないとは言いえない。要するに賜号の場合にも消息宣下が行われることがあり、その口宣案が、叙位任官の場合と同様、徽号を賜る者に送られたことは明らかである。とのことです。