口宣ならびに伝宣の消息書状

上卿は職事から勅命を受けると、その事柄によって各々に伝えるのである。

この伝えるときに出す文書は、普通の消息書状の一つの書式を具えたものである。文書の書式種類の点からいえば、ここに説くべき筋合いのものでないけれども、口宣案宣旨の説明上、便宜ここに挙げることとする。伝宣草にはこの口宣ならびに伝宣の消息書状の実例が多く挙げてある。そのなかから上卿が外記に伝えた時の例を示すに、

 文保元年三月四日     宣旨

  正五位下清原真人仲方

   宜任助教

  正五位下清原真人頼光

   宜任直講 

        蔵人頭左近衛権中将藤原實次奉

    追啓 

     助教中原師世辞退替候也

まづ、上の文書は、職事姉小路實次の口宣である。口宣に、追而書のあるのは珍しいものである。これを上卿洞院公賢の伝宣した消息は、

  口宣一紙

   清原仲方同頼光等任官事

  右職事仰詞、内ゝ奉入如件、

        三月四日   左衛門督判

      大外記局

      追仰

       助教中原師世辞退替候也、

の如きもので、この消息に添えて先の口宣を大外記局に送致するのである。とのことです。