蔵人・蔵人所から出る文書は宿紙

さてかような供御の料に関して蔵人所から多く下文を出したであろうけれども、今伝わるものは、右の他に同じ島津公爵家所蔵臺明寺文書のなかに建仁二年閏十月附のものが一通あるに過ぎない。このわずかな例によって多くの下文を類推することができる。この下文の料紙は、両通ともに宿紙を用いている。蔵人が関係して出す文書は、前項に説いた口宣案を始め、後項に説く綸旨も、大体宿紙を用いるものであった。それにこの下文も宿紙を用いており、これらの事例によって、蔵人ならびに蔵人所から出る文書は、その料紙に宿紙を用いるのが通例であったと見做して誤りがないようである。とのことです。

宿紙はしゅくし、すくしとも読み、一度文字を書いて使用した紙をすき返して再生した薄墨色の紙のこと。