訴訟の裁許状として用いられた下知状

下知状は叙上の如く訴訟の裁許状として多く用いられているから、之に依って、訴訟の制度を窺うことができる。殊に鎌倉時代は、庄園の組織が最も複雑化した時であって、本所領家と地頭との間、或は地頭と地頭との間に於て荘園内各般の事柄に関して訴訟の絶間が無かったものの如く、その裁許の為めに下した下知状は極めて多く遺っており、その相論の対象となった事柄は、当時の庄園の組織、或は本所領家と地頭との関係、家族制度等、社会経済史の研究資料として、皆活用すべき内容を豊富に持っている。これが室町幕府時代に至ると、下知状は裁許状よりも更に禁制掟書等に多く用いられ、之に依って当時の制度法令の内容、或はその運用等を窺い知ることができるのである。従って下知状は、中世社会の研究資料として極めて重要な意義を持つものと云うことができる。とのことです。