下知状は、平安時代の寺院関係から起ったもの

従って今日に遺る資料から見るときは、鎌倉幕府の下知状は、平安時代の寺院関係の文書から起ったものと考えられる。然し、これは東大寺に関する平安時代の古文書が、今日極めて多数伝わっている為めに、偶々その多い中にかかる下知状に関するものが遺っているのであって、寺院以外の諸家に関する文書にも、夙くから下知如件の文言と下知状の書式も、実際に於ては存在したのであるかも知れない。然し兎に角鎌倉時代以前から下知状と見るべきもののあることは大いに注意すべき事実である。又同時に下知状が、鎌倉時代以後に於ては、専ら武家特有の文書の如き観を呈して発達変遷して来たことも動かすべからざる事実である。とのことです。